6.お礼と名前 version 2
白紙のページ6.お礼と名前
羽衣の装飾から打ち出された光線が悪魔に迫る。しかし悪魔は難なくこれを往なし、また躱した。そこに跳躍しながら繰り出された骸骨天狗の剣閃が衝撃波となって飛んで来る。悪魔が槍を大きく薙いでそれを弾くと、直後に骸骨天狗がそのまま再度鍔迫り合いに持ち込まんと飛び掛かった。しかし悪魔はそれに応じはしない。
「浅はかな真似を!」
その猛りと共に、槍の柄で骸骨天狗を殴り付け、そのまま体躯の捻りを加えた一撃をカウンターと打ち込む。しかしその一撃が骸骨天狗の身を打つことはなかった。そこにあったのは堅牢な甲殻を携え、異形となった彼の右腕。それが悪魔の渾身の一撃を防いでいた。そのまま骸骨天狗は甲殻の右腕に備わる鉾で、悪魔を貫き、更にそこから強大な光線を撃った。
直後に響くは悪魔の叫び。光線はそのまま闇色の空間に風穴を開け。その向こうには元の場所ーー現実の景色が確認出来た。
「逃がしはせん!!」
しかし悪魔はそのまま骸骨天狗にしがみつく。装飾がすぐに悪魔の身を打つが、その腕が骸骨天狗を放すことはない。また空間の靄の全てが二者ごと縛り付けんと四方八方から押し寄せる。その時だったーー。ブレスレットが一際大きく輝き、その瞬間、全てを払い除けた。骸骨天狗は全速力で駆け出し、そのまま闇色の空間から、現実へと帰還した。悪魔の怨嗟の声が帰還して尚も花森健人の耳に残っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
"私に出来るのは、ここまで"
リュミエからのメッセージが、水面のような煌めきを揺らす。それは、星の回廊にある花森健人の意識ーー朧気な逆光の影となった彼に向けられた言葉だった。
「えっ…」
"私自身、私とあなたを見つけられたのが奇跡で"
声音が聞こえるわけでもなく、また姿が見えるわけでもない。しかしその言葉に、健人は言い様のない寂しさを覚えた。
「ちょっと待ってくれよ、まだ何も」
"この場所と力だけでも、あなたに"
「待てって!…」
リュミエもまた、訳のわからない超常現象の一つ。その認識しか未だ持てないとはいえ、そのメッセージと響鳴が無ければ、自分は死んでいただろう。
「まだお礼も言ってないだろう」
共に危機を乗り越えるべく、力を尽くしてくれた人物に、礼を欠くまで腐ったつもりはない。何より一時でも相乗りした人に、このまま何もわからず消えられるなど、受け入れられなかった。
"なら、名前を呼んで欲しい"
「名前…」
一瞬の間の後に、そんなメッセージが届く。リュミエの思いを知ることは出来なかったし、状況は相も変わらず理解できない。
"叶うなら、花森健人…私の名前を"
だが、リュミエが大切なことを言っていることは感じ取れた。人の名前とは、そういうものだと思うから。
「リュミエ、ありがとう」
故に見えずとも、遠く離れたその人の名と感謝を告げた。
"見つけられて良かった"
瞬間、その言葉を最後に、テレビのスイッチを切ったように、星の回廊の光景も健人の意識も暗転した。
羽衣の装飾から打ち出された光線が悪魔に迫る。しかし悪魔は難なくこれを往なし、また躱した。そこに跳躍しながら繰り出された骸骨天狗の剣閃が衝撃波となって飛んで来る。悪魔が槍を大きく薙いでそれを弾くと、直後に骸骨天狗がそのまま再度鍔迫り合いに持ち込まんと飛び掛かった。しかし悪魔はそれに応じはしない。
「浅はかな真似を!」
その猛りと共に、槍の柄で骸骨天狗を殴り付け、そのまま体躯の捻りを加えた一撃をカウンターと打ち込む。しかしその一撃が骸骨天狗の身を打つことはなかった。そこにあったのは堅牢な甲殻を携え、異形となった彼の右腕。それが悪魔の渾身の一撃を防いでいた。そのまま骸骨天狗は甲殻の右腕に備わる鉾で、悪魔を貫き、更にそこから強大な光線を撃った。
直後に響くは悪魔の叫び。光線はそのまま闇色の空間に風穴を開け。その向こうには元の場所ーー現実の景色が確認出来た。
「逃がしはせん!!」
しかし悪魔はそのまま骸骨天狗にしがみつく。装飾がすぐに悪魔の身を打つが、その腕が骸骨天狗を放すことはない。また空間の靄の全てが二者ごと縛り付けんと四方八方から押し寄せる。その時だったーー。ブレスレットが一際大きく輝き、その瞬間、全てを払い除けた。骸骨天狗は全速力で駆け出し、そのまま闇色の空間から、現実へと帰還した。悪魔の怨嗟の声が帰還して尚も花森健人の耳に残っていた。
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"私に出来るのは、ここまで"
リュミエからのメッセージが、水面のような煌めきを揺らす。それは、星の回廊にある花森健人の意識ーー朧気な逆光の影となった彼に向けられた言葉だった。
「えっ…」
"私自身、私とあなたを見つけられたのが奇跡で"
声音が聞こえるわけでもなく、また姿が見えるわけでもない。しかしその言葉に、健人は言い様のない寂しさを覚えた。
「ちょっと待ってくれよ、まだ何も」
"この場所と力だけでも、あなたに"
「待てって!…」
リュミエもまた、訳のわからない超常現象の一つ。その認識しか未だ持てないとはいえ、そのメッセージと響鳴が無ければ、自分は死んでいただろう。
「まだお礼も言ってないだろう」
共に危機を乗り越えるべく、力を尽くしてくれた人物に、礼を欠くまで腐ったつもりはない。何より一時でも相乗りした人に、このまま何もわからず消えられるなど、受け入れられなかった。
"なら、名前を呼んで欲しい"
「名前…」
一瞬の間の後に、そんなメッセージが届く。リュミエの思いを知ることは出来なかったし、状況は相も変わらず理解できない。
"叶うなら、花森健人…私の名前を"
だが、リュミエが大切なことを言っていることは感じ取れた。人の名前とは、そういうものだと思うから。
「リュミエ、ありがとう」
故に見えずとも、遠く離れたその人の名と感謝を告げた。
"見つけられて良かった"
瞬間、その言葉を最後に、テレビのスイッチを切ったように、星の回廊の光景も健人の意識も暗転した。