2.微睡みと逸話 version 6
腕輪と憬れ(編集中)
その時、その別れ際、少女は青年にブレスレットを渡した。二人の頭上には街灯の灯りと夜空、そして散りばめられた星々。ブレスレットもまたその中にあって、光放つ翼を思わせる装飾が施されていた。
あの時、彼女とどんな話をしたんだっけーー。
―――――――――――――――――――――――――
微睡みの中、徐々に覚醒に向かう意識。自宅アパートのベッドに身を横たえる花森健人は、僅かにその眉根を寄せた。やがてその目が静かに開かれる。同時に思い起こされるは自身の直近の記憶。影の怪物に襲われた夜。その記憶に健人はベッドの上で独り言ちる。
「俺、どうして…」
どうして、今ここにいるんだ。どうして、あんな姿に変わったんだ。助かったんだ。頭が未だ少し痛むのは、命に関わる大事があった精神的疲労故か、それとも一連の不明瞭さ故か。ふとスマートフォンで時間を見る。10時36分。大学の講義には完全に遅刻していた。首に手を当てる。あの怪物に絞められた痛みは消えていた。鏡で自身の姿を確認する。首から下は先の"烏骸骨"の姿ではなく、変化の直前まで着ていたジャケットとジーンズ姿ではあった。だが顔はーー。
しかし鏡には普段と変わらない自分の姿が映っている。疲労感こそ色濃く浮かんだ顔であったが、健人は杞憂に胸を撫で下ろした。
しかし鏡には普段と変わらない自分の姿が映っている。疲労感こそ色濃く浮かんだ顔であったが、健人は杞憂に胸を撫で下ろした。その左手には未だ、あのブレスレットを着けたままーー。
―――――――――――――――――――――――――
重い心身を引き摺りながらも、どうにか英道大学の学生ホールで学友の桧山初樹と合流する。
「花っち、顔色悪いけど大丈夫か?」
「ああ、ちょっとなんていうか…変な夢でも見たんだと思う。それこそ…狐にでもつままれたような」
初樹は健人の様子に対して怪訝さ混じりに言ったが、健人は話をぼかし、或いは自身にそう言い含める。
その時、その別れ際、少女は青年にブレスレットを渡した。二人の頭上には街灯の灯りと夜空、そして散りばめられた星々。ブレスレットもまたその中にあって、光放つ翼を思わせる装飾が施されていた。
あの時、彼女とどんな話をしたんだっけーー。
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微睡みの中、徐々に覚醒に向かう意識。自宅アパートのベッドに身を横たえる花森健人は、僅かにその眉根を寄せた。やがてその目が静かに開かれる。同時に思い起こされるは自身の直近の記憶。影の怪物に襲われた夜。その記憶に健人はベッドの上で独り言ちる。
「俺、どうして…」
どうして、今ここにいるんだ。どうして、あんな姿に変わったんだ。助かったんだ。頭が未だ少し痛むのは、命に関わる大事があった精神的疲労故か、それとも一連の不明瞭さ故か。ふとスマートフォンで時間を見る。10時36分。大学の講義には完全に遅刻していた。首に手を当てる。あの怪物に絞められた痛みは消えていた。鏡で自身の姿を確認する。首から下は先の"烏骸骨"の姿ではなく、変化の直前まで着ていたジャケットとジーンズ姿ではあった。だが顔はーー。
しかし鏡には普段と変わらない自分の姿が映っている。疲労感こそ色濃く浮かんだ顔であったが、健人は杞憂に胸を撫で下ろした。その左手には未だ、あのブレスレットを着けたままーー。
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重い心身を引き摺りながらも、どうにか英道大学の学生ホールで学友の桧山初樹と合流する。
「花っち、顔色悪いけど大丈夫か?」
「ああ、ちょっとなんていうか…変な夢でも見たんだと思う。それこそ…狐にでもつままれたような」
初樹は健人の様子に対して怪訝さ混じりに言ったが、健人は話をぼかし、或いは自身にそう言い含める。