2.微睡みと逸話 version 3
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腕輪と憬れ(編集中)
今から数年前、星の綺麗な夜。
ひとりでベンチに腰を下ろし星空を見上げる少女に、バイト帰りの青年が声をかける。こんな時間に女の子がひとりで出歩いては危険だと。また自身の経験から、なにか悩みを抱えているのではないかと。
当時の彼は善人だった。まだ“正義の味方”に憧れ、人助けを志すお人好しであった。しかし、彼はもう“正義の味方”を諦めかけていた。自分の無力さにつくづく愛想が尽きていた。
彼女は旅人だった。もっと危険な夜を何度も過ごしてきており、その心配は必要なかった。しかし、彼女には連れもいなければ帰る場所もない。久々に誰かから受け取ったその優しさをたしかに温もりとして感じていた。
別れ際に彼女は、彼にブレスレットを渡す。星の瞬き、或いは光放つ翼を思わせる装飾が施されたそれは、2人を“繋げる”ものだと言う。彼女は彼の優しさを忘れたくなかった。その温もりにまた触れたいがための贈り物だった。
―――――――――――――――――――――――――
どうして今、これを見てるんだ。俺は、あの時――。
微睡みの中、徐々に覚醒に向かう意識。自宅アパートのベッドに身を横たえる花森健人は、僅かにその眉根を寄せた。やがてその目が静かに開かれる。同時に思い起こされるは自身の直近の記憶。影の怪物に襲われた夜。その記憶に健人はベッドの上で独り言ちる。
「俺、どうして…」
どうして、今ここにいるんだ。どうして、あんな姿に変わったんだ。どうして、襲われたんだ。どうして、助かったんだ。頭が未だ少し痛むのは、精神的疲労故か、それとも一連の不明瞭さ故か。ふとスマートフォンで時間を見る。10時36分。大学の講義には完全に遅刻している。
別れ際に彼女は、彼にブレスレットを渡す。星の瞬き、或いは光放つ翼を思わせる装飾が施されたそれは、2人を“繋げる”ものだと言う。彼女は彼の優しさを忘れたくなかった。その温もりにまた触れたいがための贈り物だった。
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どうして今、これを見てるんだ。俺は、あの時――。
微睡みの中、徐々に覚醒に向かう意識。自宅アパートのベッドに身を横たえる花森健人は、僅かにその眉根を寄せた。やがてその目が静かに開かれる。同時に思い起こされるは自身の直近の記憶。影の怪物に襲われた夜。その記憶に健人はベッドの上で独り言ちる。
「俺、どうして…」
どうして、今ここにいるんだ。どうして、あんな姿に変わったんだ。どうして、襲われたんだ。どうして、助かったんだ。頭が未だ少し痛むのは、精神的疲労故か、それとも一連の不明瞭さ故か。ふとスマートフォンで時間を見る。10時36分。大学の講義には完全に遅刻している。