5.指輪と理由 version 2

2023/06/02 17:50 by someone
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白紙のページ5.
「花っち!」
「ハッサン、その人を頼む!」
サクラの怪物による攻撃を剣で弾きながら、駆けつけた初樹に向けて叫ぶ健人。既に黒地の衣に青い装飾を身に付けていたその姿に、初樹は事態を察する。
「行きましょう、早く!」
直後に沢村と目を合わせ、二人はその場から駆け出していこうとした。しかしその瞬間、サクラはその花びらを自身の周囲に舞わせてその中に消える。剣の横凪ぎが空振りとなり、慌てて健人が振り向けば、沢村と初樹の前に花びらが舞う。そしてその中からサクラが再び姿を現した。即座に沢村目掛けて攻撃が仕掛けられる。健人の速度も、側にいた初樹でも、間に合わない。直後に攻撃を受けた沢村の叫びが公園に響いた。その胸に負った傷からは血が流れ、共に樹木に斬りつけられたスーツが赤く染まる。離れた場所から、この公園にいたのだろう誰かの悲鳴が聞こえた。健人はサクラを追って剣を振るうも、異形の身が桜の花びらに消える一連の挙動を、捉えることができない。
「クソ!これじゃ…!」
初樹と沢村に駆け寄りながらも、頭に血が上り苛立つ健人。沢村に肩を貸してを庇いながら、その傍らに立つ初樹が声を張る。
「闇雲に追っても埒が明かない!だったら、花っちーー!」
その時、沢村の左斜め前ーー健人から見て4時の方向に花びらが舞い、サクラが再度襲い来る。
「ーーカウンターだ!」
瞬時に迎撃する健人が剣を突き出した。しかしその攻撃は、再度花びらが舞う虚空を突いたのみであり、また超常の力を宿した花びらはその場で爆ぜ、健人にダメージを与える。同時にその対角から、サクラは花びらと共に沢村へと突貫した。ふざけんな、無茶苦茶だろこんなの。健人は振り向き様に、沢村と彼を庇わんとした初樹の後ろ姿を見てそう吐き捨てる。
だが、それだけではなかった。今まさに花森健人の意識が捉えている衝撃的光景。誰かを庇い、大切な友人が傷つこうとしているその瞬間が、"ゆっくりとしている"。それは衝撃故の認知かと一瞬誤認しかけた。しかし、それは否。自身の思考と挙動が周囲のそれとズレ、自分の方がずっと速くなっている。加速する意識はその事象を理解しきれていないが、理屈はいい。まだ間に合う。ならばーー。
夜を思わせる黒地の衣。これを装飾するは空色の水晶で構成された、爪か牙を思わせる魔道具。それが独りでに衣を離れ、素早く宙を舞えば、サクラの異形から友たちを守らんとその間に光を結ぶ。そこに形成された盾が、爆ぜる花びらと伸ばされたサクラの樹木を防いだ。

      

「花っち!」
「ハッサン、その人を頼む!」
サクラの怪物による攻撃を剣で弾きながら、駆けつけた初樹に向けて叫ぶ健人。既に黒地の衣に青い装飾を身に付けていたその姿に、初樹は事態を察する。
「行きましょう、早く!」
直後に沢村と目を合わせ、二人はその場から駆け出していこうとした。しかしその瞬間、サクラはその花びらを自身の周囲に舞わせてその中に消える。剣の横凪ぎが空振りとなり、慌てて健人が振り向けば、沢村と初樹の前に花びらが舞う。そしてその中からサクラが再び姿を現した。即座に沢村目掛けて攻撃が仕掛けられる。健人の速度も、側にいた初樹でも、間に合わない。直後に攻撃を受けた沢村の叫びが公園に響いた。その胸に負った傷からは血が流れ、共に樹木に斬りつけられたスーツが赤く染まる。離れた場所から、この公園にいたのだろう誰かの悲鳴が聞こえた。健人はサクラを追って剣を振るうも、異形の身が桜の花びらに消える一連の挙動を、捉えることができない。
「クソ!これじゃ…!」
初樹と沢村に駆け寄りながらも、頭に血が上り苛立つ健人。沢村に肩を貸してを庇いながら、その傍らに立つ初樹が声を張る。
「闇雲に追っても埒が明かない!だったら、花っちーー!」
その時、沢村の左斜め前ーー健人から見て4時の方向に花びらが舞い、サクラが再度襲い来る。
「ーーカウンターだ!」
瞬時に迎撃する健人が剣を突き出した。しかしその攻撃は、再度花びらが舞う虚空を突いたのみであり、また超常の力を宿した花びらはその場で爆ぜ、健人にダメージを与える。同時にその対角から、サクラは花びらと共に沢村へと突貫した。ふざけんな、無茶苦茶だろこんなの。健人は振り向き様に、沢村と彼を庇わんとした初樹の後ろ姿を見てそう吐き捨てる。
だが、それだけではなかった。今まさに花森健人の意識が捉えている衝撃的光景。誰かを庇い、大切な友人が傷つこうとしているその瞬間が、"ゆっくりとしている"。それは衝撃故の認知かと一瞬誤認しかけた。しかし、それは否。自身の思考と挙動が周囲のそれとズレ、自分の方がずっと速くなっている。加速する意識はその事象を理解しきれていないが、理屈はいい。まだ間に合う。ならばーー。
夜を思わせる黒地の衣。これを装飾するは空色の水晶で構成された、爪か牙を思わせる魔道具。それが独りでに衣を離れ、素早く宙を舞えば、サクラの異形から友たちを守らんとその間に光を結ぶ。そこに形成された盾が、爆ぜる花びらと伸ばされたサクラの樹木を防いだ。