【絶望の賜主】 version 1

2024/07/15 20:43 by sagitta_luminis sagitta_luminis
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【絶望の賜主】
創作『星と健花の英雄譚』の登場人物。敵組織・種族エクリプスのトップであり実質的なラスボス。

@[TOC]

### 幼少期〜青年期(人間の時代)
種族:人間
本名:不明
文明の発達した高度な情報化社会に生まれる。
良心に囲まれて育ち、清らかな心を知る優しき青年となる。
しかし情報社会のなかで、虐げられる人々や生き汚い大人たちが大勢いることを知ってしまう。
青年は、清らかな者たちが汚い者たちの我欲に利用され、傷つけられてしまう社会に不満を抱いていた。
そんな彼は突如として絶大な力を手にする。
“量元核レガリア”———それはどんな願いでも叶えられる、あらゆる不条理を覆す奇跡の力。
青年は純粋がゆえに願った。
「清らかな者が、清らかなまま生きていられる世界を創りたい。他を穢す不純な者を、この世界から消し去ってくれ」

その願いはたしかに遂げられ、不純なる者はこの世界からいなくなった。
僅か瞬きの間に、青年の考える“不純、穢れ”の価値基準に基いて一人ひとり丁寧にジャッジされ、該当する者は排除された。
その結果、世界に残った人間はただひとり、青年だけであった。

### 願いを遂げてから
青年は愕然とした。
穢れなき者は他に居なかったのか!? 親しかった家族や友達も、みな穢れていたというのか!?
清らかな心だってたくさん見てきたはずだ。それらも全て、穢れた心を隠すためのまやかしだったのか…!?
そんなのあんまりだ! 穢れた人間しか居ない世界で、私は偽りの良心を信じきっていただけなんて、なんて滑稽な…。
青年は絶望した。
上っ面だけの良心を見抜けなかった自分にも、清らかなる者などいなかった世界にも、心底失望した。

しかし、そんな彼を絶望から救い出した者がいた。
その者は“エクリプス”———穢れた命の死に絶えた世界で、新たに芽吹いた清廉なる命。
エクリプスは、我欲のために清らかな者を傷つけたりしない。偽りの良心で誰かを欺いたりしない。
その存在は、彼が追い求めた理想への解であり、何も無いこの世界に差す一筋の希望の光だった。

このエクリプス、実は彼が無意識のうちに生み出した存在だった。
というのも、量元核レガリアは彼の願いである『清らかな者が、清らかなまま生きていられる世界を創りたい』を忠実に叶えるべく、力を与えていたのだ。
その力は“魔術”と呼ばれ、絶望を糧としてエクリプスを生み出したり、世界を洗浄しうるだけの様々な力を内包しているほか、最大の障害である寿命すらも取っ払われ、悠久の時を生きられる身体に進化した。
もはや青年は人間ではなく、“魔術師”とでも言うべき存在に成り果てていた。
魔術を行使できるのはエクリプスも同じで、彼らは自分たちの魔術で同胞を生み出し、頭数を増やしていった。


### 魔術師の時代
かつて魔術師は、生まれ育ったこの星が世界の全てだと思っていた。しかしある時、世界の広さはそんなちっぽけなものではないと知る。
そこで魔術師はエクリプスたちと共に宇宙船を創り、別の星へと旅に出た。

魔術師の思惑通り、別の星にはまだ穢れた者たちが大勢のさばっていた。
しかし、魔術師がなにか事を起こす前に、エクリプスたちは穢れた者を次々に絶望へ堕とし始めた。そして、驚異的な速さで手を広げ、頭数を増やし、星全体を絶望に染めあげてしまった。
この光景を目の当たりにした魔術師は、エクリプスの生存本能と思われたこの行動に、もうひとつ意味があることに気付く。それは———

『穢れた者でも絶望させれば清らかになる』

絶望とは、望みが絶たれること。我欲に塗れた汚い欲望も、それそのものを絶ってしまえば平和になるのだ。
現にこの星では誰も欲を持たず、誰も加害せず、誰も穢されない。魔術師の描いた理想郷がここに実現していた。

「そうか、絶望こそが平和への鍵だ…!」

この時、魔術師のなかに大きな使命感と希望が生まれた。
世界中の穢れた望みを絶つ。それが私の、清らかな望み。世界を洗浄するという大義を掲げ、その手段として絶望に可能性を見出した魔術師は自らをこう名乗った。

———“絶望の賜主”、と。


### 賜主の時代
世界平和の第一人者としてエクリプスを率い、数多の星を“洗浄”してきた絶望の賜主は、ある時もうひとつの希望に巡り会う。
量元核レガリア———かつて賜主の願いを叶え、賜主に願いを叶えるだけの力を与えたそれは、あの後行方知れずになっていた。もしもう一度手に入るなら、今度こそ“全ての星を絶望で染める”と願って洗浄を完了させるつもりでいたが、これまで一度も見つからなかった。
しかし、今回偶然見つけたそれは、既に持ち主がいた。

“希望の魔女リュミエ”、彼女はエクリプスが手にかけようとしたとある星に住んでいた。彼女は人々の夢や希望を守ることが正義であるとし、賜主のやり方に真っ向から反発した。

リュミエが使う魔法は、魔術とは正反対に希望から力を得る。そこへさらに量元核レガリアを掛け合わせて力を底上げしているため異次元の強さを誇り、エクリプスが束でかかっても返り討ちに遭うほど。

賜主はリュミエが守ろうとする希望を「他力本願で醜悪な希望」と吐き捨てるが、同時にリュミエには穢れた望みが一切なく、絶望も洗浄も必要のない“清らかな者”であることを見抜いていた。賜主本人とエクリプスを除けば、リュミエは賜主が初めて目にした“天然の清らかな心”であり、他にも清らかな心を持つ者がいたことに驚嘆する。
しかしリュミエは醜悪な希望を守ろうとしてしまう上に大きすぎる力を振るうためエクリプスでは対処できず、何よりその手のレガリアを我が物とするため、賜主はリュミエとの直接対決を決断する。

賜主との対決のさなか、賜主とエクリプスの大群を全て捌ききれなかったリュミエは守るべき民を奪われ、力の根源たる希望を失う。さらにその絶望から生まれたマーニ・セレーネに媒介(レガリアを扱う権能)を奪われ、レガリアの力を引き出せなくなり完全に勝ち筋を絶たれる。

      

創作『星と健花の英雄譚』の登場人物。敵組織・種族エクリプスのトップであり実質的なラスボス。

目次幼少期〜青年期(人間の時代)願いを遂げてから魔術師の時代賜主の時代

幼少期〜青年期(人間の時代)

種族:人間
本名:不明
文明の発達した高度な情報化社会に生まれる。
良心に囲まれて育ち、清らかな心を知る優しき青年となる。
しかし情報社会のなかで、虐げられる人々や生き汚い大人たちが大勢いることを知ってしまう。
青年は、清らかな者たちが汚い者たちの我欲に利用され、傷つけられてしまう社会に不満を抱いていた。
そんな彼は突如として絶大な力を手にする。
“量元核レガリア”———それはどんな願いでも叶えられる、あらゆる不条理を覆す奇跡の力。
青年は純粋がゆえに願った。
「清らかな者が、清らかなまま生きていられる世界を創りたい。他を穢す不純な者を、この世界から消し去ってくれ」

その願いはたしかに遂げられ、不純なる者はこの世界からいなくなった。
僅か瞬きの間に、青年の考える“不純、穢れ”の価値基準に基いて一人ひとり丁寧にジャッジされ、該当する者は排除された。
その結果、世界に残った人間はただひとり、青年だけであった。

願いを遂げてから

青年は愕然とした。
穢れなき者は他に居なかったのか!? 親しかった家族や友達も、みな穢れていたというのか!?
清らかな心だってたくさん見てきたはずだ。それらも全て、穢れた心を隠すためのまやかしだったのか…!?
そんなのあんまりだ! 穢れた人間しか居ない世界で、私は偽りの良心を信じきっていただけなんて、なんて滑稽な…。
青年は絶望した。
上っ面だけの良心を見抜けなかった自分にも、清らかなる者などいなかった世界にも、心底失望した。

しかし、そんな彼を絶望から救い出した者がいた。
その者は“エクリプス”———穢れた命の死に絶えた世界で、新たに芽吹いた清廉なる命。
エクリプスは、我欲のために清らかな者を傷つけたりしない。偽りの良心で誰かを欺いたりしない。
その存在は、彼が追い求めた理想への解であり、何も無いこの世界に差す一筋の希望の光だった。

このエクリプス、実は彼が無意識のうちに生み出した存在だった。
というのも、量元核レガリアは彼の願いである『清らかな者が、清らかなまま生きていられる世界を創りたい』を忠実に叶えるべく、力を与えていたのだ。
その力は“魔術”と呼ばれ、絶望を糧としてエクリプスを生み出したり、世界を洗浄しうるだけの様々な力を内包しているほか、最大の障害である寿命すらも取っ払われ、悠久の時を生きられる身体に進化した。
もはや青年は人間ではなく、“魔術師”とでも言うべき存在に成り果てていた。
魔術を行使できるのはエクリプスも同じで、彼らは自分たちの魔術で同胞を生み出し、頭数を増やしていった。

魔術師の時代

かつて魔術師は、生まれ育ったこの星が世界の全てだと思っていた。しかしある時、世界の広さはそんなちっぽけなものではないと知る。
そこで魔術師はエクリプスたちと共に宇宙船を創り、別の星へと旅に出た。

魔術師の思惑通り、別の星にはまだ穢れた者たちが大勢のさばっていた。
しかし、魔術師がなにか事を起こす前に、エクリプスたちは穢れた者を次々に絶望へ堕とし始めた。そして、驚異的な速さで手を広げ、頭数を増やし、星全体を絶望に染めあげてしまった。
この光景を目の当たりにした魔術師は、エクリプスの生存本能と思われたこの行動に、もうひとつ意味があることに気付く。それは———

『穢れた者でも絶望させれば清らかになる』

絶望とは、望みが絶たれること。我欲に塗れた汚い欲望も、それそのものを絶ってしまえば平和になるのだ。
現にこの星では誰も欲を持たず、誰も加害せず、誰も穢されない。魔術師の描いた理想郷がここに実現していた。

「そうか、絶望こそが平和への鍵だ…!」

この時、魔術師のなかに大きな使命感と希望が生まれた。
世界中の穢れた望みを絶つ。それが私の、清らかな望み。世界を洗浄するという大義を掲げ、その手段として絶望に可能性を見出した魔術師は自らをこう名乗った。

———“絶望の賜主”、と。

賜主の時代

世界平和の第一人者としてエクリプスを率い、数多の星を“洗浄”してきた絶望の賜主は、ある時もうひとつの希望に巡り会う。
量元核レガリア———かつて賜主の願いを叶え、賜主に願いを叶えるだけの力を与えたそれは、あの後行方知れずになっていた。もしもう一度手に入るなら、今度こそ“全ての星を絶望で染める”と願って洗浄を完了させるつもりでいたが、これまで一度も見つからなかった。
しかし、今回偶然見つけたそれは、既に持ち主がいた。

“希望の魔女リュミエ”、彼女はエクリプスが手にかけようとしたとある星に住んでいた。彼女は人々の夢や希望を守ることが正義であるとし、賜主のやり方に真っ向から反発した。

リュミエが使う魔法は、魔術とは正反対に希望から力を得る。そこへさらに量元核レガリアを掛け合わせて力を底上げしているため異次元の強さを誇り、エクリプスが束でかかっても返り討ちに遭うほど。

賜主はリュミエが守ろうとする希望を「他力本願で醜悪な希望」と吐き捨てるが、同時にリュミエには穢れた望みが一切なく、絶望も洗浄も必要のない“清らかな者”であることを見抜いていた。賜主本人とエクリプスを除けば、リュミエは賜主が初めて目にした“天然の清らかな心”であり、他にも清らかな心を持つ者がいたことに驚嘆する。
しかしリュミエは醜悪な希望を守ろうとしてしまう上に大きすぎる力を振るうためエクリプスでは対処できず、何よりその手のレガリアを我が物とするため、賜主はリュミエとの直接対決を決断する。

賜主との対決のさなか、賜主とエクリプスの大群を全て捌ききれなかったリュミエは守るべき民を奪われ、力の根源たる希望を失う。さらにその絶望から生まれたマーニ・セレーネに媒介(レガリアを扱う権能)を奪われ、レガリアの力を引き出せなくなり完全に勝ち筋を絶たれる。