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🌠リーンとの出会い 前編
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「影魔がでたぞー!」 「なんだって!?」 「楽器を置いて逃げろー!」 きょうはサジテル地区のおまつり。たくさんの人がいてにぎやかです。 心羽とおんがく団のみんなは、このあとのえんそう会のじゅんびをしていました。 それなのに、、、えいまがわるさをしに来ました。 みんな大あわてでにげます。わたしたちも楽器やに物をおいて走ります。 えいまはこわいけど、せっかくのえんそう会を台なしにされたことの方がざんねんでした。 「心羽ちゃん!ぼーっとしてないで!行くよ!」 おんがく団の人があわてた声でわたしを呼びかけました。 「よしこれで全員!急いで講堂に避難!」 「「「はい!」」」 おんがく団はまとまってひなんします。 にげると中、えいまにこわされたお店がありました。たくさんきずが付いていて、ボロボロでした。 それを見て不安になりました。わたしの楽器は大じょうぶかな? かんがえだすと止まりません。わたしはみんなとはぐれて、だいじなだいじな楽器をとりにもどりました。 じゅんび室の楽器はぶじでした。でも、このあとやってきてめちゃくちゃにこわしていくかもしれない。 わたしはやっぱり不安になって、えいまが来ないうちにこっそり自分の楽器ケースをもちだします。 だいじなトランペットが入った楽器ケースをかかえて、みんなのところへもどろうとしていた時です。えいまに見つかってしまいました。 すごくこわい顔です。わたしはあわてて、急いでにげました。 ですが、ぜん力で走ってもすぐ追いつかれてしまいます。 「がきんちょ、なにをそんなに大事そうに抱えてるんだ?」 すごくこわい声です。わたしはえいまにどつかれて転んでしまい、楽器ケースを落としてしまいました。 「あっ…!」 だいじなだいじなトランペットが、えいまにこわされちゃう…! 「それがこんなに大事か?」 えいまは落とした楽器ケースをひろうと、ケースにきずを付けようとしました。 「やめて!それはお母さんがくれた、たいせつな楽器なの!おねがいきずつけないで!」 わたしの8さいのたん生日プレゼント。おんがく団に入ったお祝いに、ずっとほしかった楽器をかってくれた。 たくさんれん習して、やっとえんそう会に出れるようになったのに、、、 なにもかもえいまにめちゃくちゃにされて、くやしくて泣き出しそうになりました。 その時、剣を持った若いお兄さんがあらわれたのです。 「はあっ!」 若いお兄さんはすごいはやさで剣を振るい、えいまからトランペットを取り返してくれました。 さらに、わたしをおそったえいまとたたかい、やっつけてくれました。 「大丈夫?怪我はない?」 若いお兄さんは、やさしい声でわたしの身をあんじてくれます。 わたしはなぜかなみだが出そうになりました。はずかしいので急いでそこから立ち去ろうとします。 「大じょうぶです。ありがとうございます」 「でも、その怪我…」 転んだときにできたすり傷がお兄さんにバレてしまいました。もうにげられません。 「近くの医療所でお手当てしようね」 「うん…」 医りょう所に行くとちゅう、お兄さんはこんなことを言いました。 「素敵な衣装だね。きみ、音楽団の子?」 「うん」 「今日の演奏会、できなくて残念だったね…」 お兄さんのその言葉は、わたしの心をやさしくつつみこみました。見られないようにがまんした涙が、またあふれてきます。 お兄さんはそれを見たのか、一呼吸おいてなぐさめてくれました。 「大丈夫。演奏できる日は必ずくるよ」 「音楽団の元気が出る演奏、みんな聴きたがってたから」 「その時には俺も、その演奏を聴きたいな」 お兄さんは、つよくてやさしい人。わたしもお兄さんのような人になりたいと思いました。 ——————————————————————————— あの日から、私は「元気が出る演奏」をひとつの指標にし、様々な会場で元気を与えてきた。憧れのあの人がどこかで聴いていないかな、とも思いながら。 出会ったのは1度だけで、その後のコンサートでも何度かステージ上から探したけれど結局見つからなかった。 当時の私は名前すら聞いておらず、あれから6年が経ったものの結局あの人が何者だったのかはわかっていない。 ただ音楽を続けていれば、いつかまた会える気がしていた。
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