心羽パート プロットノート ①前日譚 version 3
心羽パート プロットノート ①前日譚
@[TOC]
### 段落①『抜け殻となり辺境の星に落ちる〜展望台に辿り着くまで』
(“星創の道行き”より一部改変して流用)
(“星創の道行き”より一部転用)
#### 3年前(地球時間で19年前) 農村 夜
抜け殻はリュミエとしての記憶や名前も全て失っていた。
抜け殻は空っぽになったその身でひとり、ただ寒さに震えているところを近くの農村の者に見つかり保護される。
しかし、名前を聞いてもわからない。何処から来たかもわからない。家族も、引率の者もいない。農村の者たちはこの少女にどう対応したらいいかわからず、困り果てていた。
「私は誰の“家族”?」
抜け殻は村人とのやり取りを重ねる中で、人はみな“家族”というものがあり、それがない自分には居場所がないことを知る。誰の家族でもない自分がいることでみなが困っている現状に耐えられなくなった抜け殻は、3日も経たぬうちに農村から立ち去る。自分を生み育てた“親”という存在から家族なるものが連なっていることを聞き出していた抜け殻は過去を思い出そうとする。その過程で自身が“魔法”という類のない力の持ち主であることを思い出すと、唯一思い出せた転移の魔法を使って“家族”探しの旅に出た。
抜け殻は村人とのやり取りを重ねる中で、人はみな“家族”というものがあり、それがない自分には居場所がないことを知る。誰の家族でもない自分がいることでみなが困っている現状に耐えられなくなった抜け殻は、3日も経たぬうちに農村から立ち去る。
#### 3年前〜1年前 家族を探す旅
自分を生み育てた“親”という存在から家族なるものが連なっていることを聞き出していた抜け殻は過去を思い出そうとする。その過程で自身が“魔法”という類のない力の持ち主であることを思い出すと、唯一思い出せた転移の魔法を使って“家族”探しの旅に出た。
抜け殻は数多の星を巡り、いくつもの“家族”を目にしてきた。その温もりは全て、自分に向けられることはなく、悔しさと羨望だけが募る。胸の内に抱いた惨めな感情は長い旅のなかで燻り、吐き出せない苦しさを抱え、やがて抜け殻は“自分に家族などない”という諦念に呑まれ涙が溢れる。
#### 1年前(地球時間で2年前) 朝憬市展望台 深夜
そこに、ある青年が現れる。彼は人の世の無情と虚しさに怒り、だが自身の無力という現実に心を失くしかかっていた。青年は抜け殻に声をかけた。それは燎火を思わせるような、温かい声だった。その温もりに絆されるように、抜け殻は誰にも話したことのない心の内をはじめて打ち明ける。
(キーワード:「親もいない」「家族も友達もいない」「世界中のどこにもいない」「ひとりぼっち」「寂しいのは嫌」「切ないのは嫌」「私を見て」「認めてほしい」「温もりがほしい」「望まれたい」「愛されたい」……)
「私ね、世界で独りぼっちなんだ」
「全然知らない街に来て、家族も友達も誰もいなくて」
「こんなに宇宙は広いのに、その何処にも私の声は届かない」
「それじゃあ私は、なんのために生まれてきたの?」
青年は抜け殻の声を必死に聞いていた。暗がりのなかで表情は伺いしれないが、青年の温かな眼差しはたしかに抜け殻に向けられ、その声は悔しさに震えていた。
「なんでかな…一生懸命やってるのにね」
「ただ、ひどい話かもだけどさ。俺、ここで…君に会えて良かったな」
「…えっ」
抜け殻は驚きを隠せない。“会えてよかった”と、その邂逅を歓迎してくれる人はかつて一人もいなかった。この青年は、あるいは…。
「うん、ホントにひどい…多分今、君みたいな人と、話したかったんだ」
青年の言うひどい話とはどういう意味なのか、抜け殻にはわかなかった。ただ、抜け殻の眼差しを受け止める優しい声は、今にも崩れてしまいそうな脆さだった。
「もし、なんだけど…よかったら、なんだけど」
「独り言、言っていかない?」
「独り言?」
「うん、独り言。君の声は、俺に届くかもしれない。俺の声は、君に届くかもしれない」
青年に提案された“独り言”。その意味はわからなくても、どうしようもない惨めなこの感情の吐き出す先を、この青年は用意しようとしてくれている。その意図は伝わってきた。
あなたのほうが、壊れそうなのに。
「だから、何ていうかな…自分と、お互いを助けるつもりで、さ…」
互いの内を吐き出していくなかで二人は友となり、青年は抜け殻に名前を与えた。"燎星心羽"ーーそれが彼女に与えられた名前だった。心羽は友という絆をくれた青年に、自身が身につけていたブレスレットを渡した。友自らが名を与えた“燎星心羽”という存在を、その記憶に刻みたかったから。
ポイント
・このとき、心羽は青年の顔も名前も知らない。
・二人の出会いは一夜限りのことで、心羽は翌朝に朝憬市を立ち去っている。
・青年の心の苦しみを理解できるほど心羽の感受性は成熟しておらず、この日のことに後ろめたさや罪悪感はない。
・この出会いを通じて心羽の心境が変化する。青年のような優しい心を他者に向けられる、『優しいことができる人』になりたいと憧れるようになる。
・青年は心羽の事実上の名付け親でもある。本当の親ではないとはいえ、その存在は心羽の親探しの旅に一応の決着をつけてくれた。
### 段落②『展望台を離れた後〜ユール森林を訪れるまで』
#### 1年前〜現在 夢を追う旅
青年との出会いにより抜け殻———否、“燎星心羽”は『夢』を手に入れた。『優しいことができる人になりたい』という夢。それは新しい旅の目的となり、親探しの旅を終えて夢を叶える旅へと心羽を導くことになる。
心羽はまず、抜け殻だった自分と決別する意味を込めて朝憬市を後にする。その後、旅の中で「何かに悩み、困っている人」を探す。自分がそうであったように、彼がそうしたように。心羽の辞書にはまだ、具体的な『優しいこと』の例がひとつしかなかった。
しかし、旅を重ねそのやり方だけでは通用しないことを学んでいく。どんなことをすれば優しいことができるのか、優しいことができる人とはどんな人なのか。
心羽の旅ではそれを探っていく。
ポイント
・青年との出会いを経て成長したように見えるが、心の拠り所と夢を見つけただけであり、内面的な成長はほぼしていない。
・そのため、孤独を寂しがったり普通でない自分を嫌悪する性格は変わらない。
・心羽の精神年齢は見た目相応であり、愛着形成に難がある子供のような行動をとる。
### 段落③『ユール森林を来訪〜旅立つまで』
サブタイトル【千想の魔法】に相当する段落。
### 段落④『ユール森林を旅立つ〜日本を訪れるまで』
### 段落⑤『日本を訪れる〜朝憬市に着くまで』
### 段落⑥『朝憬市に着く〜花森健人に出会うまで』
#### 1日目 ユール森林 昼
→ [②千想の魔法](https://mimemo.io/m/JYpaMlM7MzGyrdg)へ
目次3年前(地球時間で19年前) 農村 夜3年前〜1年前 家族を探す旅1年前(地球時間で2年前) 朝憬市展望台 深夜1年前〜現在 夢を追う旅1日目 ユール森林 昼
(“星創の道行き”より一部転用)
3年前(地球時間で19年前) 農村 夜
抜け殻はリュミエとしての記憶や名前も全て失っていた。
抜け殻は空っぽになったその身でひとり、ただ寒さに震えているところを近くの農村の者に見つかり保護される。
しかし、名前を聞いてもわからない。何処から来たかもわからない。家族も、引率の者もいない。農村の者たちはこの少女にどう対応したらいいかわからず、困り果てていた。
「私は誰の“家族”?」
抜け殻は村人とのやり取りを重ねる中で、人はみな“家族”というものがあり、それがない自分には居場所がないことを知る。誰の家族でもない自分がいることでみなが困っている現状に耐えられなくなった抜け殻は、3日も経たぬうちに農村から立ち去る。
3年前〜1年前 家族を探す旅
自分を生み育てた“親”という存在から家族なるものが連なっていることを聞き出していた抜け殻は過去を思い出そうとする。その過程で自身が“魔法”という類のない力の持ち主であることを思い出すと、唯一思い出せた転移の魔法を使って“家族”探しの旅に出た。
抜け殻は数多の星を巡り、いくつもの“家族”を目にしてきた。その温もりは全て、自分に向けられることはなく、悔しさと羨望だけが募る。胸の内に抱いた惨めな感情は長い旅のなかで燻り、吐き出せない苦しさを抱え、やがて抜け殻は“自分に家族などない”という諦念に呑まれ涙が溢れる。
1年前(地球時間で2年前) 朝憬市展望台 深夜
そこに、ある青年が現れる。彼は人の世の無情と虚しさに怒り、だが自身の無力という現実に心を失くしかかっていた。青年は抜け殻に声をかけた。それは燎火を思わせるような、温かい声だった。その温もりに絆されるように、抜け殻は誰にも話したことのない心の内をはじめて打ち明ける。
(キーワード:「親もいない」「家族も友達もいない」「世界中のどこにもいない」「ひとりぼっち」「寂しいのは嫌」「切ないのは嫌」「私を見て」「認めてほしい」「温もりがほしい」「望まれたい」「愛されたい」……)
「私ね、世界で独りぼっちなんだ」
「全然知らない街に来て、家族も友達も誰もいなくて」
「こんなに宇宙は広いのに、その何処にも私の声は届かない」
「それじゃあ私は、なんのために生まれてきたの?」
青年は抜け殻の声を必死に聞いていた。暗がりのなかで表情は伺いしれないが、青年の温かな眼差しはたしかに抜け殻に向けられ、その声は悔しさに震えていた。
「なんでかな…一生懸命やってるのにね」
「ただ、ひどい話かもだけどさ。俺、ここで…君に会えて良かったな」
「…えっ」
抜け殻は驚きを隠せない。“会えてよかった”と、その邂逅を歓迎してくれる人はかつて一人もいなかった。この青年は、あるいは…。
「うん、ホントにひどい…多分今、君みたいな人と、話したかったんだ」
青年の言うひどい話とはどういう意味なのか、抜け殻にはわかなかった。ただ、抜け殻の眼差しを受け止める優しい声は、今にも崩れてしまいそうな脆さだった。
「もし、なんだけど…よかったら、なんだけど」
「独り言、言っていかない?」
「独り言?」
「うん、独り言。君の声は、俺に届くかもしれない。俺の声は、君に届くかもしれない」
青年に提案された“独り言”。その意味はわからなくても、どうしようもない惨めなこの感情の吐き出す先を、この青年は用意しようとしてくれている。その意図は伝わってきた。
あなたのほうが、壊れそうなのに。
「だから、何ていうかな…自分と、お互いを助けるつもりで、さ…」
互いの内を吐き出していくなかで二人は友となり、青年は抜け殻に名前を与えた。"燎星心羽"ーーそれが彼女に与えられた名前だった。心羽は友という絆をくれた青年に、自身が身につけていたブレスレットを渡した。友自らが名を与えた“燎星心羽”という存在を、その記憶に刻みたかったから。
ポイント
・このとき、心羽は青年の顔も名前も知らない。
・二人の出会いは一夜限りのことで、心羽は翌朝に朝憬市を立ち去っている。
・青年の心の苦しみを理解できるほど心羽の感受性は成熟しておらず、この日のことに後ろめたさや罪悪感はない。
・この出会いを通じて心羽の心境が変化する。青年のような優しい心を他者に向けられる、『優しいことができる人』になりたいと憧れるようになる。
・青年は心羽の事実上の名付け親でもある。本当の親ではないとはいえ、その存在は心羽の親探しの旅に一応の決着をつけてくれた。
1年前〜現在 夢を追う旅
青年との出会いにより抜け殻———否、“燎星心羽”は『夢』を手に入れた。『優しいことができる人になりたい』という夢。それは新しい旅の目的となり、親探しの旅を終えて夢を叶える旅へと心羽を導くことになる。
心羽はまず、抜け殻だった自分と決別する意味を込めて朝憬市を後にする。その後、旅の中で「何かに悩み、困っている人」を探す。自分がそうであったように、彼がそうしたように。心羽の辞書にはまだ、具体的な『優しいこと』の例がひとつしかなかった。
しかし、旅を重ねそのやり方だけでは通用しないことを学んでいく。どんなことをすれば優しいことができるのか、優しいことができる人とはどんな人なのか。
心羽の旅ではそれを探っていく。
ポイント
・青年との出会いを経て成長したように見えるが、心の拠り所と夢を見つけただけであり、内面的な成長はほぼしていない。
・そのため、孤独を寂しがったり普通でない自分を嫌悪する性格は変わらない。
・心羽の精神年齢は見た目相応であり、愛着形成に難がある子供のような行動をとる。
1日目 ユール森林 昼
→ ②千想の魔法へ