ぼくしぴ13期/ 春プロローグ version 23

2023/08/20 19:10 by roku
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ぼくしぴ13期/ 春プロローグ
春、新たな年度を迎えてヒメヒオウギ学園にも新たな季節がやってきた。
入学してきたばかりの新入生を捕まえようと、1週間ほど前からサークル棟は勧誘の嵐で賑やかなものだ。
潮「おやおやぁ、巷は賑やかなものだ。楽しそうといえば楽しそうだけど、・・・・・・うらやましいかと言われると何とも微妙な気持ちになるというものだね」
サークル棟最上階の部屋の窓を開ければ心地の良い風と数枚の桜の花びらは部屋へと舞い込んでくる。そこから屈託のない笑顔で下を見る潮の様子に、思わず加百祢の表情も緩むというものだ。
加百祢「そうですね。ありがたいことに僕たちのサークルは早々に定員に達したし、・・・・・・とっても素敵な人たちばかり集まってくれましたからね」
潮「そうだとも!おかげでこの一年、まったく退屈せずに済みそうだ!」
そんな会話をしながら、これから始まるであろう愉快な日々に思いを馳せていれば、コンコンと部屋の扉をノックする音が聞こえた。
潮「・・・・・・来たかな!」
のんびり外を眺めていて気が付かなかったが、既に時計はメンバー合流の約束の時間を指していた。
潮は待ってましたと言わんばかりに、机の上に準備していたクラッカーを2,3個手に取ると、そのまま加百祢に視線を向ける。
準備はいいか!とでも言いたげなその表情に加百祢も笑顔でうなずくと、「どうぞ~」と扉の向こう側へ声をかけた。

「失礼しま・・・・・・」

「「ようこそ~~!!」」

扉が開かれると同時に、パンパンパン・・・と軽快な音があたりに響き渡る。
開かれた扉の外を見るとどうやらそこには既にサークルメンバー全員がそろっていたようで、代表して扉を開けたのであろう、個性的なファッションの少年が驚いているのかどうなのか、真顔のままクラッカーから飛び出した紙吹雪にまみれていた。
潮「おや?全員一緒だったのだね、せっかく全員にクラッカーを浴びせようと思っていたのに・・・こんなことならもっとたくさん鳴らせばよかったかな?」
加百祢「ふふ、いいじゃないですか。まだまだ鳴らす機会はたくさんありますよ。さ、皆さんも中へどうぞ」
加百祢がそう促せば、メンバー達は少し遠慮がちにサークル室へと足を踏み入れる。
好きなところに座ってね、なんて言う潮の言葉を聞いてソファーであったり、一人掛けのパイプ椅子であったり、室内には不似合いな丸太のベンチであったり、思い思いの場所に腰かけた。
全員が着席したことを確認すると、満足そうに笑顔を浮かべたまま潮が話し出す。
潮「では改めて、私がこのサークルの長、汐見潮だ!気軽に潮と呼んで欲しい。当学園の様々なサークルの中から我がサークルを選んでくれたこと、心より感謝する!」
潮「君たちと顔を合わせた瞬間に確信したよ、このサークルはとってもいいものになる!君たちに最高の一年間を約束しよう!」
溢れ出んばかりの自信に満ちた潮は、そのままチラリと視線を加百祢に向ける。
潮「さぁ加百祢君、君の番だよ!」
加百祢「ふふ、ええ。わかっていますよ。彼女のサポートを務めています、甘々加百祢です。よろしくお願いしますね。何かわからないことがあったら何でも聞いて下さい」
潮とは対照的に、穏やかで静かな笑顔を浮かべつつ加百祢はメンバー達に向けてペコリと軽く頭を下げた。
潮「さて・・・、では早速で悪いけど次は君たちの自己紹介をしてもらおうかな。お互いの呼び名も分からぬままでは弾むものも弾まないというもの!・・・じゃあ、最初にドアを開けてくれた君から頼むよ!そこから時計回りに行こうか!」
潮が自己紹介を促すように手を差し出したのは、個性的な面々を集めたこの場においても一際存在感を放つ奇抜なファッションの少年。
先程クラッカーの紙吹雪を一身に受けたせいか、未だ髪の先に紙片をくっつけたままの少年が促されるままに口を開く。
甘夏「日照甘夏。二年生、よろしく」
端的かつシンプルな自己紹介をした甘夏のとなりで、一人の少女が興味深そうにその様子を眺めていた。
視線の先はその奇抜ともいえるような特徴的なファッションのようで。
宍和「アナタ、とっても素敵なお洋服を着てるのね。とっても似合ってる」
甘夏「でしょう?ボクはかわいいから、どんなお洋服でも着こなせちゃうんだよね」
宍和「えぇ、とても素敵。・・・・・・アラ、失礼。自己紹介だったわね」
少女はスカートをヒラリ揺らしながら、甘夏に向けていた視線を改めてみんなのほうへと向きなおす。
宍和「アタシは貝寄風宍和。レトロなものが好きで、この学園ではデザインのお勉強をしてるの。・・・この子と一緒にね!」
そう話を振られたの少女は、ワンテンポ遅れながらも宍和の自己紹介に続くように口を開く。
ノエル「……柊木ノエル。える、って呼んで。……このサークルのこと、よくわからないけど……よろしく」
潮「ふむふむ!オシャレなメンバーが多くて非常に喜ばしいね!いろいろと教えて頂きたいものだよ!」
そんなテンポの良い自己紹介の中、パンッと、どこかで聞いたような小気味よい音が再び響く。
見れば加百祢が余っていたクラッカーを再び鳴らしたようで、キラキラとした紙吹雪やリボンがひらひらと宙を舞っていた。
ノエル「……っ!!」
突然の音に、自己紹介を終えたばかりのノエルが思わずびくりと体を震わせる。
加百祢「おや、失礼しました。驚かせてしまったようで。準備していたクラッカーがたくさん余ってしまったので、せっかくなら積極的に鳴らしていこうと思いまして・・・もしよろしければ皆さんもいかがです?」
加百祢はそういいながら机の上に余っていたクラッカーを手に取ると、それをそのまま隣にいたネネに手渡せば、次に自己紹介を控えていたネネは少し戸惑ったような表情を浮かべつつ加百祢の手からそのクラッカーを受け取った。
ネネ「……そうですね、では……せっかくなので」
ネネ「暁ネネ、といいます。母がオランダの方で、数年前まではオランダに住んでいました。みなさん、よろしくお願いします」
にこっ、と笑顔を浮かべて、合わせて手にしたクラッカーをパンッと鳴らした。
そんな少し変わった自己紹介の流れを面白く感じたのか、じゃあ俺も、と次の青年も同じようにクラッカーを手に取った。
冴雨「柴乃冴雨です。道覚えるのとかが苦手で今日もここまで来るのに友達に連れてきてもらいました。よろしく」
(この流れのどっかにスチル① スチル次第で文章要修正)
悠生「その友達を連れてきました、古いに寺って書いてフルトです!旅行とか好きなんで、お土産とかたくさん持ってきます!よろしく!」
明日「この流れ……次はあすちゃんかな~?こんちゃ~っす!いつもニコニコ!ハッピーなあすちゃんだぜ!明るく楽しく前向きに、がモットー!よろしくー!」
潮「うんうん、二人とも明るくて非常にいいね!一緒にサークルを盛り上げていこうー!」
賑やかに自己紹介を進めていく面々を見て、自己紹介の順番を次に控えた女性が楽しそうに笑みを浮かべる。
希依「楽しそうな方が多くてこれからが楽しみですね。……申し遅れました、小豆畑希依といいます。これ、……うちの和菓子屋の御菓子なので良ければ皆さんで召し上がってください」
めぐる「わたしは飛沫めぐる、っていうの! このサークルで青春謳歌しちゃいます~!えいえい、おー!」
加百祢「和菓子屋さんなんですね、ありがとうございます。せっかくですし、後ほど皆さんでいただきましょうか」
潮「そうだな!この後懇親会も計画しているのでそこで頂くとしようか!・・・というわけで、さぁ、残るは君一人だ!自己紹介の大トリを務めて頂こうかな!」
梓乃「まさか最後になっちゃうなんてね。俺は夜塚梓乃、校内で万事屋をやってるよ。何かお困りごとがあればいつでも相談にのるから。仲良くしてくれると嬉しいな」
加百祢「おや、万事屋さんとは心強いですね。何かあれば相談してみることにしましょう。ね、潮さん」
潮「うんうん!さて、それじゃあ無事全員の自己紹介も終わったことだし、このまま親睦会になだれ込むとしようか!名前と顔を知っただけではまだまだ足りないというもの、もっと交流を深めて早くみんな仲良しになって欲しいからね!」
希依「この後親睦会、という事であれば・・・早速準備をしないといけませんね」
めぐる「ふんふん、潮ちゃん、会場はこのお部屋でいいのかなぁ?」
自己紹介を終えたメンバー達がそれぞれ準備に取り掛かろうと動き出せば、その様子を見ていた潮はふっふっふ……、と若干怪しげな笑みを浮かべて見せた。
潮「ふふふ、初日からみんなの手を煩わせるような事するわけないだろう?……親睦会の準備は、しっかりばっちり!!もう終わっているよ!!ねぇ、加百祢君!」
加百祢「えぇ、もちろんです。皆さんはゆっくりお茶とお菓子を楽しんでください」
甘夏「準備できてる、って……、どの辺に?」
広い部屋をくるりと見渡してハテナマークを浮かべたメンバー達を、潮は楽しそうな表情で見つめている。
そしてくるりと背を見せたかと思えば、部屋にあった大きな窓をスパァン!と勢いよく開いた。
ふわりと風が吹き込んでくるのと同時に、ひらひらと桜の花びらが舞い込んでくる。
窓の外は、満開の桜。
潮「見たまえよ!外はこんなにも美しい桜が咲き誇っているというのに、部屋の中に籠るなどナンセンスだと思わないかい!」
***
潮と加百祢、二人に促されるように中庭まで降りてきたメンバーが目にしたのは、桜に囲まれた中にセッティングされた豪華な御茶会場だった。
何とも座り心地の良さそうな人数分の椅子に、大きな丸テーブルの上には零れ落ちんばかりのスイーツや軽食、ドリンクが準備されている。
梓乃「すごいね、とてもいちサークルの親睦会とは思えない規模だけど」
宍和「本当だわ、……あちらには給仕さんのような方も控えてるみたいだし」
ネネ「こんなに豪華なお茶会ってなかなかないですよね、わくわくするのと同時にちょっと圧倒されちゃいます」
加百祢「潮さんが皆さんに心より楽しんでもらいたいと準備していましたからね」
潮「ふふん、やはりやるからには全力でやらないとね!多少私財を投じたが、おかげさまでみんなの喜ぶ顔が見れて私は嬉しいよ!さぁさぁ、みんな椅子にでも座って遠慮なくつまんでくれた前!そして存分に交流を深めてくれ給えよ!」
さぁさぁとメンバー達を椅子に座らせて、自らが給仕だとでも言わんばかりに潮はパタパタと動き回る。
やがてぽつりぽつりとおしゃべりを始めたメンバー達を見て、満足そうに笑顔を浮かべた。
明日「わ~、こっちはあの有名店のケーキに、こっちはあの行列の絶えないカフェのクッキー……!」
梓乃「ふむ、どれどれ……。うん、確かにおいしい。行列ができるのも納得というものだね」
明日「このサンドイッチもおいしい~!ちょうどお昼の時間だし、いくらでも食べれちゃうかも!」
悠生「こっちのジュースもよく見る有名な奴だなぁ。せっかくだしみんなで乾杯でもする?」
![5](https://mimemo.s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/attachment/74f87a61-b401-44fa-af23-b00cf9528e93.png)
冴雨「いいね。新たな出会いに乾杯~、って感じ?」
ちょっとした思い付き程度でそういえばどこからともなく黒服の給仕が人数分のグラスを持ち、あれよあれよという間にジュースの入ったグラスが全員の手元に配られる。
誰ともなく乾杯~!と声をかければ、カチン、とグラス同士のぶつかる音があたりに響いた。
***
潮「さて、せっかく場も盛り上がってきたところだし、もっとお互いの話をしようじゃないか。みんなも知っての通りこのサークルは恋愛を推奨している場でもあるからね。互いを知らずして恋愛に発展することなどないだろうし、……そこで、良いものを準備した!加百祢君、例の物をここへ!」
そういえばはいは~い、と加百祢が両手に収まるほどの段ボール箱を持って現れる。
丁度人のこぶし一つが入りそうな程度の穴が開いているようだ。
潮「この箱の中には話のテーマがを書いた紙が何枚か入ってるんだ。ただ話すだけじゃ面白くないし、こういったゲーム性も楽しいだろう?じゃあ……最初は君に引いてもらおうかな!」
ノエル「えるが……?」
指名されたノエルはといえば少し驚いたような表情を浮かべつつ、言われた通り箱の中から紙を一枚引く。
潮「ふむ、最初のお題は……『好きなもの』か!最初にふさわしい無難なお題が来たね!」
ノエル「好きなもの、ぬいぐるみとか……好き。フワフワしててかわいいから」
明日「あーぽいぽい!かわいくてぬいぐるみとか似合いそうだもんな!……あ、それじゃあこういうのも好きか……!?」
そういいながら明日が手に持っていたぬいぐるみをズイっと差し出すと、ノエルは何とも言えぬ表情を浮かべてそれを見る。
その長い耳はウサギなのか、それとも飛び出た前歯はげっ歯類の類なのか、色合い的には熊のようにも見えなくもない。判断の難しいそのぬいぐるみにノエルは思わず首をかしげてしまう。
ノエル「……ある意味かわいい、と言えなくもないと思うけど。あなたはその子が好きなの?」
明日「うん!ほら、ヘアピンもお揃いなんだぜ!あとは……イチゴのタルトとか、おしゃれするのも好き!」
宍和「おしゃれ、っていろんなお洋服を着ることができてとっても楽しいのよね。アタシもおしゃれするのって、とっても好き」
ネネ「確か……柊木くんと貝寄風くんは同じデザイン学科と言っていましたよね。長いお付き合いなんですか?」
ノエル「大学に入ってからなの。貝寄風とは授業とかでよく顔を合わせてたから話すようになって」
宍和「えぇ、このサークルにも一緒に入ろうってお話してたの」
明日「実は明日ちゃんとねねぴも元から知り合いなんだぜ!」
ネネ「はい、あすぴとはバイト先が一緒で……。いつも仲良くしてもらってるんです」
悠生「へーえ、結構仲間内でサークルに入ってきた人が多いんだな」
冴雨「俺たちも例にもれず、って感じだけど」
梓乃「へぇ、君たちも元々知り合いだったのかな?」
悠生「あぁ、しかもけっこう長くてね~。小学校のころからの幼馴染なんだよね、俺たち」
冴雨「そうそう。……まぁ、改めてつるむようになったのは高校に入ってからだけど」
めぐる「じゃあ私ときぃ先輩みたいな感じだぁ!私たちも高校の部活が一緒で……、だから大学のサークルでも一緒になれてうれしいと同時にびっくり!みたいな感じ!」
希依「えぇ、本当に。めぐるちゃん妹みたいについつい可愛がっちゃって……」
希依「えぇ、本当に。めぐるちゃん妹みたいについつい可愛がっちゃって、守りたくなっちゃうというか……」
梓乃「……と言うことは、みんなと完全に初めましてなのは俺と……」
すると梓乃の視線を感じたのか、甘夏は手に持っていたクッキーをポイッと口の中に放り込むとひらひら~、と挙手して見せる。
甘夏「ん、ボクも一人だよ。だからみんな初めまして」
加百祢「んー……とは言ってもお二人はお二人である意味校内でよく目立つ方なので、一方的にではありますけど存じ上げてはいましたよ」
潮「それはその通りだな。甘夏くんはその目立つ容貌もあって私も良く視界に入っていたよ!」
甘夏「まぁね、ぼくってばかわいいから目立っちゃって」
加百祢「梓乃さんも良く目立つ外見をしてますし、万事屋さんのお話というのもよく聞いてましたからね」
潮「それに甘夏くんがとっても歌が上手だという話も聞いてるよ。……さっきの好きなものの話に戻るけど、やっぱり歌を歌うのが好きなのかな?いつか拝聴してみたいものだね!」
甘夏「悪いけど人の前で歌うのは好きじゃないんだよね。ボク、カラオケとかはヒトカラ派なの」
潮「おやぁ、では目の前で歌ってくれなくてもかまわないよ。録音だってなんだっていいさ。上手いと言われれば聞きたくなるのが人の性というものだろう?」
甘夏「……ダメったらダーメ」
潮「ふむ……それは残念。いつか甘夏くんの気が変わることを祈ろうとするか」
めぐる「でもその気持ちもわかる~!私も歌う事ってとっても好きなんだけど……まだ成長段階っていうか、人の前で歌うのは緊張しちゃう~的な」
潮「歌好きというのはみんなそうなのか……?」
めぐる「私はまだ成長段階だから少し恥ずかしいな~って感じかなぁ。招来は歌手になりたいって思ってるから、その折にはぜひ聞きに来て欲しいなぁ~」
潮「……!よいだろう!デビューの際にははち切れんばかりの花環と共に祝おうじゃないか!」
加百祢「ふふ、今からその時が来るのが楽しみですね。……そういえば、お二人にはまだ好きなものは聞いていませんでしたが」
悠生「ん?俺はやっぱり旅行とかかなー。パワースポットみたいなところ廻ったり、旅先のおいしいもの食べたりしてさー!」
明日「あー!明日ちゃんもお出掛け大好き!特に遊べる場所とか、みんなで行ったら楽しいだろうな!」
加百祢「おや、良いアイデアですね。当サークルでも旅行というものを計画してみましょうか。その際には知恵を貸していただいても?」
悠生「もちろん、力になれることならなんだって手伝うよ!」
ネネ「私も外出ってとっても好きなので、お出掛け隙の方が多いと嬉しいですね」
冴雨「俺もー。特に水族館とか海とか好きでさぁ、自分の好きなところにみんなで行けたりしたら楽しそうだなーって思うよ」
ネネ「そういえば可愛らしいお魚のピアスを付けていますね。よくお似合いです」
冴雨「お前のサクランボもイカしてるよ」
宍和「ピアスといえば……、アナタの付けてるピアスもとっても素敵でお似合いだわ。せっかくだし、アナタの好きなものも聞いておきたいのだけど」
梓乃「好きなものか、うーん……そうだな。猫より犬派、かな」
希依「あら、猫さんもかわいらしいですよ。モフモフしていて、なつっこくて」
梓乃「なつっこいっていうなら犬のほうが、ってイメージはあるけど。あとは、そうだな……万事屋も好きでやってるよ」
ネネ「好きがお仕事にできるのはいいことだよね、私もお菓子とかが好きだからカフェのキッチンっていう仕事が楽しくて楽しくて」
希依「分かります。私も実家の和菓子屋さんをお手伝いしてるんですが、楽しくて、…………あっ!」
そこまで言いかけて、希依は何かを思い出したかのように声を上げる。
そしてそのまま一瞬席を離れて、戻ってきたときに手にしていたのは、自己紹介の時から持っていた小さな風呂敷の包み。
忘れるところでした、なんて言いながら机の開いたスペースでそれを開けば、中からは漆塗りの綺麗な小箱が。さらにそれを開けば、色とりどりで美しい練り切りがきちんと並べられていた。
加百祢「これはこれは美しい和菓子ですね。……ならばそれに見合うお皿が必要ですね、取ってきましょうか」
潮「そうそう!自己紹介の時に聞いてから楽しみにしていたんだ!やはり和菓子というものは見るも楽しい美しいものだな!」
希依「はい、うっかり忘れてしまうところでした。是非皆さんに食べて頂きたくて。和菓子は見た目も大事な要素ですから、よければお好みのものを選んでください」
そういいながら和菓子の入った器をみんなの前へと差し出せば、繊細かつ美しいそのお菓子に、思わずみんなの口からも感嘆の息が漏れる。
宍和「とっても綺麗ね、どれにしようか悩んじゃうわ」
ノエル「……、じゃあ、えるはこれにする。かわいくて美味しそう」
希依「えぇ、どれを選んでいただいても味は保証します」
ノエル「……おいしい」
![ff73c6d0f9bc2e7a](https://mimemo.s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/attachment/ba67a7fb-0fbb-434e-a5ce-17ec52a8e8cf.png)
配られた和菓子をそれぞれが口に運ぶ。
その甘さに、思わず全員の表情が緩むというもの。
「これが花より団子、ってことか」なんて、誰かがつぶやいた。
潮「さて!じゃあ第二弾だ!好きを知っただけでは仲良しとはまだ言えないからな、次なるお題でもっと交流を深めようじゃないか!」
潮が再び例の箱を取り出した。
小さな穴から見える中身は、わさわさとそれなりの量であることが見て取れる。
総勢12名、全員でこれだけの話題を語りつくせばどれほど時間がかかるのか、想像に難くないことだろう。
終わりの見えないお茶会は、まだまだ始まったばかりである。
潮「じゃあ、次のお題は──……!」
***
加百祢「潮さん、お疲れ様です。温かい紅茶をどうぞ」
潮「相変わらず気が利くなぁ、加百祢くんは。ありがたくいただくよ」
サークル室から見える空は、既に暗くなっていた。
さすがにみんなに疲れが見え始めたのと、薄暗くなってきたからと解散したのは既に17時を回ったころだった。
潮の用意したお題箱の中身は結局全部が消化されるわけもなくて、半分くらいはまだ残ったままだ。
潮「楽しい時間に終わりが来てしまうのは残念だけどね、お話は又今度改めてすればいいさ。それより、今は今後への期待に満ち満ちているよ」
加百祢「そうですね、今後の彼らがどのような関係を築いていくのか……、私も一緒に見届けていきますよ」
潮「ふふ、やはり持つべきものは加百祢くんだな。これからも一つ、よろしく頼むよ」
潮と加百祢、二人は楽しそうに顔を見合わせた。
二人によって整えられたこの舞台に集められた彼らはどのような物語を作り上げてゆくのか。
人によれば良縁となるかもしれない。悪縁となるかもしれない。
予想のできない未来に二人は想いを募らせた。
楽しい楽しい恋愛の舞台が今、幕を開ける──……。
【僕と危険人物のCP戦争 13期】
GM:盛り塩/ろく

*開幕──!
![jhvjhhvjyvjgv](https://mimemo.s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/attachment/e95e8fae-a22e-4064-b00e-13c0e07845d9.png)
***



      

春、新たな年度を迎えてヒメヒオウギ学園にも新たな季節がやってきた。
入学してきたばかりの新入生を捕まえようと、1週間ほど前からサークル棟は勧誘の嵐で賑やかなものだ。
潮「おやおやぁ、巷は賑やかなものだ。楽しそうといえば楽しそうだけど、・・・・・・うらやましいかと言われると何とも微妙な気持ちになるというものだね」
サークル棟最上階の部屋の窓を開ければ心地の良い風と数枚の桜の花びらは部屋へと舞い込んでくる。そこから屈託のない笑顔で下を見る潮の様子に、思わず加百祢の表情も緩むというものだ。
加百祢「そうですね。ありがたいことに僕たちのサークルは早々に定員に達したし、・・・・・・とっても素敵な人たちばかり集まってくれましたからね」
潮「そうだとも!おかげでこの一年、まったく退屈せずに済みそうだ!」
そんな会話をしながら、これから始まるであろう愉快な日々に思いを馳せていれば、コンコンと部屋の扉をノックする音が聞こえた。
潮「・・・・・・来たかな!」
のんびり外を眺めていて気が付かなかったが、既に時計はメンバー合流の約束の時間を指していた。
潮は待ってましたと言わんばかりに、机の上に準備していたクラッカーを2,3個手に取ると、そのまま加百祢に視線を向ける。
準備はいいか!とでも言いたげなその表情に加百祢も笑顔でうなずくと、「どうぞ~」と扉の向こう側へ声をかけた。

「失礼しま・・・・・・」

「「ようこそ~~!!」」

扉が開かれると同時に、パンパンパン・・・と軽快な音があたりに響き渡る。
開かれた扉の外を見るとどうやらそこには既にサークルメンバー全員がそろっていたようで、代表して扉を開けたのであろう、個性的なファッションの少年が驚いているのかどうなのか、真顔のままクラッカーから飛び出した紙吹雪にまみれていた。
潮「おや?全員一緒だったのだね、せっかく全員にクラッカーを浴びせようと思っていたのに・・・こんなことならもっとたくさん鳴らせばよかったかな?」
加百祢「ふふ、いいじゃないですか。まだまだ鳴らす機会はたくさんありますよ。さ、皆さんも中へどうぞ」
加百祢がそう促せば、メンバー達は少し遠慮がちにサークル室へと足を踏み入れる。
好きなところに座ってね、なんて言う潮の言葉を聞いてソファーであったり、一人掛けのパイプ椅子であったり、室内には不似合いな丸太のベンチであったり、思い思いの場所に腰かけた。
全員が着席したことを確認すると、満足そうに笑顔を浮かべたまま潮が話し出す。
潮「では改めて、私がこのサークルの長、汐見潮だ!気軽に潮と呼んで欲しい。当学園の様々なサークルの中から我がサークルを選んでくれたこと、心より感謝する!」
潮「君たちと顔を合わせた瞬間に確信したよ、このサークルはとってもいいものになる!君たちに最高の一年間を約束しよう!」
溢れ出んばかりの自信に満ちた潮は、そのままチラリと視線を加百祢に向ける。
潮「さぁ加百祢君、君の番だよ!」
加百祢「ふふ、ええ。わかっていますよ。彼女のサポートを務めています、甘々加百祢です。よろしくお願いしますね。何かわからないことがあったら何でも聞いて下さい」
潮とは対照的に、穏やかで静かな笑顔を浮かべつつ加百祢はメンバー達に向けてペコリと軽く頭を下げた。
潮「さて・・・、では早速で悪いけど次は君たちの自己紹介をしてもらおうかな。お互いの呼び名も分からぬままでは弾むものも弾まないというもの!・・・じゃあ、最初にドアを開けてくれた君から頼むよ!そこから時計回りに行こうか!」
潮が自己紹介を促すように手を差し出したのは、個性的な面々を集めたこの場においても一際存在感を放つ奇抜なファッションの少年。
先程クラッカーの紙吹雪を一身に受けたせいか、未だ髪の先に紙片をくっつけたままの少年が促されるままに口を開く。
甘夏「日照甘夏。二年生、よろしく」
端的かつシンプルな自己紹介をした甘夏のとなりで、一人の少女が興味深そうにその様子を眺めていた。
視線の先はその奇抜ともいえるような特徴的なファッションのようで。
宍和「アナタ、とっても素敵なお洋服を着てるのね。とっても似合ってる」
甘夏「でしょう?ボクはかわいいから、どんなお洋服でも着こなせちゃうんだよね」
宍和「えぇ、とても素敵。・・・・・・アラ、失礼。自己紹介だったわね」
少女はスカートをヒラリ揺らしながら、甘夏に向けていた視線を改めてみんなのほうへと向きなおす。
宍和「アタシは貝寄風宍和。レトロなものが好きで、この学園ではデザインのお勉強をしてるの。・・・この子と一緒にね!」
そう話を振られたの少女は、ワンテンポ遅れながらも宍和の自己紹介に続くように口を開く。
ノエル「……柊木ノエル。える、って呼んで。……このサークルのこと、よくわからないけど……よろしく」
潮「ふむふむ!オシャレなメンバーが多くて非常に喜ばしいね!いろいろと教えて頂きたいものだよ!」
そんなテンポの良い自己紹介の中、パンッと、どこかで聞いたような小気味よい音が再び響く。
見れば加百祢が余っていたクラッカーを再び鳴らしたようで、キラキラとした紙吹雪やリボンがひらひらと宙を舞っていた。
ノエル「……っ!!」
突然の音に、自己紹介を終えたばかりのノエルが思わずびくりと体を震わせる。
加百祢「おや、失礼しました。驚かせてしまったようで。準備していたクラッカーがたくさん余ってしまったので、せっかくなら積極的に鳴らしていこうと思いまして・・・もしよろしければ皆さんもいかがです?」
加百祢はそういいながら机の上に余っていたクラッカーを手に取ると、それをそのまま隣にいたネネに手渡せば、次に自己紹介を控えていたネネは少し戸惑ったような表情を浮かべつつ加百祢の手からそのクラッカーを受け取った。
ネネ「……そうですね、では……せっかくなので」
ネネ「暁ネネ、といいます。母がオランダの方で、数年前まではオランダに住んでいました。みなさん、よろしくお願いします」
にこっ、と笑顔を浮かべて、合わせて手にしたクラッカーをパンッと鳴らした。
そんな少し変わった自己紹介の流れを面白く感じたのか、じゃあ俺も、と次の青年も同じようにクラッカーを手に取った。
冴雨「柴乃冴雨です。道覚えるのとかが苦手で今日もここまで来るのに友達に連れてきてもらいました。よろしく」
(この流れのどっかにスチル① スチル次第で文章要修正)
悠生「その友達を連れてきました、古いに寺って書いてフルトです!旅行とか好きなんで、お土産とかたくさん持ってきます!よろしく!」
明日「この流れ……次はあすちゃんかな~?こんちゃ~っす!いつもニコニコ!ハッピーなあすちゃんだぜ!明るく楽しく前向きに、がモットー!よろしくー!」
潮「うんうん、二人とも明るくて非常にいいね!一緒にサークルを盛り上げていこうー!」
賑やかに自己紹介を進めていく面々を見て、自己紹介の順番を次に控えた女性が楽しそうに笑みを浮かべる。
希依「楽しそうな方が多くてこれからが楽しみですね。……申し遅れました、小豆畑希依といいます。これ、……うちの和菓子屋の御菓子なので良ければ皆さんで召し上がってください」
めぐる「わたしは飛沫めぐる、っていうの! このサークルで青春謳歌しちゃいます~!えいえい、おー!」
加百祢「和菓子屋さんなんですね、ありがとうございます。せっかくですし、後ほど皆さんでいただきましょうか」
潮「そうだな!この後懇親会も計画しているのでそこで頂くとしようか!・・・というわけで、さぁ、残るは君一人だ!自己紹介の大トリを務めて頂こうかな!」
梓乃「まさか最後になっちゃうなんてね。俺は夜塚梓乃、校内で万事屋をやってるよ。何かお困りごとがあればいつでも相談にのるから。仲良くしてくれると嬉しいな」
加百祢「おや、万事屋さんとは心強いですね。何かあれば相談してみることにしましょう。ね、潮さん」
潮「うんうん!さて、それじゃあ無事全員の自己紹介も終わったことだし、このまま親睦会になだれ込むとしようか!名前と顔を知っただけではまだまだ足りないというもの、もっと交流を深めて早くみんな仲良しになって欲しいからね!」
希依「この後親睦会、という事であれば・・・早速準備をしないといけませんね」
めぐる「ふんふん、潮ちゃん、会場はこのお部屋でいいのかなぁ?」
自己紹介を終えたメンバー達がそれぞれ準備に取り掛かろうと動き出せば、その様子を見ていた潮はふっふっふ……、と若干怪しげな笑みを浮かべて見せた。
潮「ふふふ、初日からみんなの手を煩わせるような事するわけないだろう?……親睦会の準備は、しっかりばっちり!!もう終わっているよ!!ねぇ、加百祢君!」
加百祢「えぇ、もちろんです。皆さんはゆっくりお茶とお菓子を楽しんでください」
甘夏「準備できてる、って……、どの辺に?」
広い部屋をくるりと見渡してハテナマークを浮かべたメンバー達を、潮は楽しそうな表情で見つめている。
そしてくるりと背を見せたかと思えば、部屋にあった大きな窓をスパァン!と勢いよく開いた。
ふわりと風が吹き込んでくるのと同時に、ひらひらと桜の花びらが舞い込んでくる。
窓の外は、満開の桜。
潮「見たまえよ!外はこんなにも美しい桜が咲き誇っているというのに、部屋の中に籠るなどナンセンスだと思わないかい!」


潮と加百祢、二人に促されるように中庭まで降りてきたメンバーが目にしたのは、桜に囲まれた中にセッティングされた豪華な御茶会場だった。
何とも座り心地の良さそうな人数分の椅子に、大きな丸テーブルの上には零れ落ちんばかりのスイーツや軽食、ドリンクが準備されている。
梓乃「すごいね、とてもいちサークルの親睦会とは思えない規模だけど」
宍和「本当だわ、……あちらには給仕さんのような方も控えてるみたいだし」
ネネ「こんなに豪華なお茶会ってなかなかないですよね、わくわくするのと同時にちょっと圧倒されちゃいます」
加百祢「潮さんが皆さんに心より楽しんでもらいたいと準備していましたからね」
潮「ふふん、やはりやるからには全力でやらないとね!多少私財を投じたが、おかげさまでみんなの喜ぶ顔が見れて私は嬉しいよ!さぁさぁ、みんな椅子にでも座って遠慮なくつまんでくれた前!そして存分に交流を深めてくれ給えよ!」
さぁさぁとメンバー達を椅子に座らせて、自らが給仕だとでも言わんばかりに潮はパタパタと動き回る。
やがてぽつりぽつりとおしゃべりを始めたメンバー達を見て、満足そうに笑顔を浮かべた。
明日「わ~、こっちはあの有名店のケーキに、こっちはあの行列の絶えないカフェのクッキー……!」
梓乃「ふむ、どれどれ……。うん、確かにおいしい。行列ができるのも納得というものだね」
明日「このサンドイッチもおいしい~!ちょうどお昼の時間だし、いくらでも食べれちゃうかも!」
悠生「こっちのジュースもよく見る有名な奴だなぁ。せっかくだしみんなで乾杯でもする?」
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冴雨「いいね。新たな出会いに乾杯~、って感じ?」
ちょっとした思い付き程度でそういえばどこからともなく黒服の給仕が人数分のグラスを持ち、あれよあれよという間にジュースの入ったグラスが全員の手元に配られる。
誰ともなく乾杯~!と声をかければ、カチン、とグラス同士のぶつかる音があたりに響いた。


潮「さて、せっかく場も盛り上がってきたところだし、もっとお互いの話をしようじゃないか。みんなも知っての通りこのサークルは恋愛を推奨している場でもあるからね。互いを知らずして恋愛に発展することなどないだろうし、……そこで、良いものを準備した!加百祢君、例の物をここへ!」
そういえばはいは~い、と加百祢が両手に収まるほどの段ボール箱を持って現れる。
丁度人のこぶし一つが入りそうな程度の穴が開いているようだ。
潮「この箱の中には話のテーマがを書いた紙が何枚か入ってるんだ。ただ話すだけじゃ面白くないし、こういったゲーム性も楽しいだろう?じゃあ……最初は君に引いてもらおうかな!」
ノエル「えるが……?」
指名されたノエルはといえば少し驚いたような表情を浮かべつつ、言われた通り箱の中から紙を一枚引く。
潮「ふむ、最初のお題は……『好きなもの』か!最初にふさわしい無難なお題が来たね!」
ノエル「好きなもの、ぬいぐるみとか……好き。フワフワしててかわいいから」
明日「あーぽいぽい!かわいくてぬいぐるみとか似合いそうだもんな!……あ、それじゃあこういうのも好きか……!?」
そういいながら明日が手に持っていたぬいぐるみをズイっと差し出すと、ノエルは何とも言えぬ表情を浮かべてそれを見る。
その長い耳はウサギなのか、それとも飛び出た前歯はげっ歯類の類なのか、色合い的には熊のようにも見えなくもない。判断の難しいそのぬいぐるみにノエルは思わず首をかしげてしまう。
ノエル「……ある意味かわいい、と言えなくもないと思うけど。あなたはその子が好きなの?」
明日「うん!ほら、ヘアピンもお揃いなんだぜ!あとは……イチゴのタルトとか、おしゃれするのも好き!」
宍和「おしゃれ、っていろんなお洋服を着ることができてとっても楽しいのよね。アタシもおしゃれするのって、とっても好き」
ネネ「確か……柊木くんと貝寄風くんは同じデザイン学科と言っていましたよね。長いお付き合いなんですか?」
ノエル「大学に入ってからなの。貝寄風とは授業とかでよく顔を合わせてたから話すようになって」
宍和「えぇ、このサークルにも一緒に入ろうってお話してたの」
明日「実は明日ちゃんとねねぴも元から知り合いなんだぜ!」
ネネ「はい、あすぴとはバイト先が一緒で……。いつも仲良くしてもらってるんです」
悠生「へーえ、結構仲間内でサークルに入ってきた人が多いんだな」
冴雨「俺たちも例にもれず、って感じだけど」
梓乃「へぇ、君たちも元々知り合いだったのかな?」
悠生「あぁ、しかもけっこう長くてね~。小学校のころからの幼馴染なんだよね、俺たち」
冴雨「そうそう。……まぁ、改めてつるむようになったのは高校に入ってからだけど」
めぐる「じゃあ私ときぃ先輩みたいな感じだぁ!私たちも高校の部活が一緒で……、だから大学のサークルでも一緒になれてうれしいと同時にびっくり!みたいな感じ!」
希依「えぇ、本当に。めぐるちゃん妹みたいについつい可愛がっちゃって、守りたくなっちゃうというか……」
梓乃「……と言うことは、みんなと完全に初めましてなのは俺と……」
すると梓乃の視線を感じたのか、甘夏は手に持っていたクッキーをポイッと口の中に放り込むとひらひら~、と挙手して見せる。
甘夏「ん、ボクも一人だよ。だからみんな初めまして」
加百祢「んー……とは言ってもお二人はお二人である意味校内でよく目立つ方なので、一方的にではありますけど存じ上げてはいましたよ」
潮「それはその通りだな。甘夏くんはその目立つ容貌もあって私も良く視界に入っていたよ!」
甘夏「まぁね、ぼくってばかわいいから目立っちゃって」
加百祢「梓乃さんも良く目立つ外見をしてますし、万事屋さんのお話というのもよく聞いてましたからね」
潮「それに甘夏くんがとっても歌が上手だという話も聞いてるよ。……さっきの好きなものの話に戻るけど、やっぱり歌を歌うのが好きなのかな?いつか拝聴してみたいものだね!」
甘夏「悪いけど人の前で歌うのは好きじゃないんだよね。ボク、カラオケとかはヒトカラ派なの」
潮「おやぁ、では目の前で歌ってくれなくてもかまわないよ。録音だってなんだっていいさ。上手いと言われれば聞きたくなるのが人の性というものだろう?」
甘夏「……ダメったらダーメ」
潮「ふむ……それは残念。いつか甘夏くんの気が変わることを祈ろうとするか」
めぐる「でもその気持ちもわかる~!私も歌う事ってとっても好きなんだけど……まだ成長段階っていうか、人の前で歌うのは緊張しちゃう~的な」
潮「歌好きというのはみんなそうなのか……?」
めぐる「私はまだ成長段階だから少し恥ずかしいな~って感じかなぁ。招来は歌手になりたいって思ってるから、その折にはぜひ聞きに来て欲しいなぁ~」
潮「……!よいだろう!デビューの際にははち切れんばかりの花環と共に祝おうじゃないか!」
加百祢「ふふ、今からその時が来るのが楽しみですね。……そういえば、お二人にはまだ好きなものは聞いていませんでしたが」
悠生「ん?俺はやっぱり旅行とかかなー。パワースポットみたいなところ廻ったり、旅先のおいしいもの食べたりしてさー!」
明日「あー!明日ちゃんもお出掛け大好き!特に遊べる場所とか、みんなで行ったら楽しいだろうな!」
加百祢「おや、良いアイデアですね。当サークルでも旅行というものを計画してみましょうか。その際には知恵を貸していただいても?」
悠生「もちろん、力になれることならなんだって手伝うよ!」
ネネ「私も外出ってとっても好きなので、お出掛け隙の方が多いと嬉しいですね」
冴雨「俺もー。特に水族館とか海とか好きでさぁ、自分の好きなところにみんなで行けたりしたら楽しそうだなーって思うよ」
ネネ「そういえば可愛らしいお魚のピアスを付けていますね。よくお似合いです」
冴雨「お前のサクランボもイカしてるよ」
宍和「ピアスといえば……、アナタの付けてるピアスもとっても素敵でお似合いだわ。せっかくだし、アナタの好きなものも聞いておきたいのだけど」
梓乃「好きなものか、うーん……そうだな。猫より犬派、かな」
希依「あら、猫さんもかわいらしいですよ。モフモフしていて、なつっこくて」
梓乃「なつっこいっていうなら犬のほうが、ってイメージはあるけど。あとは、そうだな……万事屋も好きでやってるよ」
ネネ「好きがお仕事にできるのはいいことだよね、私もお菓子とかが好きだからカフェのキッチンっていう仕事が楽しくて楽しくて」
希依「分かります。私も実家の和菓子屋さんをお手伝いしてるんですが、楽しくて、…………あっ!」
そこまで言いかけて、希依は何かを思い出したかのように声を上げる。
そしてそのまま一瞬席を離れて、戻ってきたときに手にしていたのは、自己紹介の時から持っていた小さな風呂敷の包み。
忘れるところでした、なんて言いながら机の開いたスペースでそれを開けば、中からは漆塗りの綺麗な小箱が。さらにそれを開けば、色とりどりで美しい練り切りがきちんと並べられていた。
加百祢「これはこれは美しい和菓子ですね。……ならばそれに見合うお皿が必要ですね、取ってきましょうか」
潮「そうそう!自己紹介の時に聞いてから楽しみにしていたんだ!やはり和菓子というものは見るも楽しい美しいものだな!」
希依「はい、うっかり忘れてしまうところでした。是非皆さんに食べて頂きたくて。和菓子は見た目も大事な要素ですから、よければお好みのものを選んでください」
そういいながら和菓子の入った器をみんなの前へと差し出せば、繊細かつ美しいそのお菓子に、思わずみんなの口からも感嘆の息が漏れる。
宍和「とっても綺麗ね、どれにしようか悩んじゃうわ」
ノエル「……、じゃあ、えるはこれにする。かわいくて美味しそう」
希依「えぇ、どれを選んでいただいても味は保証します」
ノエル「……おいしい」
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配られた和菓子をそれぞれが口に運ぶ。
その甘さに、思わず全員の表情が緩むというもの。
「これが花より団子、ってことか」なんて、誰かがつぶやいた。
潮「さて!じゃあ第二弾だ!好きを知っただけでは仲良しとはまだ言えないからな、次なるお題でもっと交流を深めようじゃないか!」
潮が再び例の箱を取り出した。
小さな穴から見える中身は、わさわさとそれなりの量であることが見て取れる。
総勢12名、全員でこれだけの話題を語りつくせばどれほど時間がかかるのか、想像に難くないことだろう。
終わりの見えないお茶会は、まだまだ始まったばかりである。
潮「じゃあ、次のお題は──……!」


加百祢「潮さん、お疲れ様です。温かい紅茶をどうぞ」
潮「相変わらず気が利くなぁ、加百祢くんは。ありがたくいただくよ」
サークル室から見える空は、既に暗くなっていた。
さすがにみんなに疲れが見え始めたのと、薄暗くなってきたからと解散したのは既に17時を回ったころだった。
潮の用意したお題箱の中身は結局全部が消化されるわけもなくて、半分くらいはまだ残ったままだ。
潮「楽しい時間に終わりが来てしまうのは残念だけどね、お話は又今度改めてすればいいさ。それより、今は今後への期待に満ち満ちているよ」
加百祢「そうですね、今後の彼らがどのような関係を築いていくのか……、私も一緒に見届けていきますよ」
潮「ふふ、やはり持つべきものは加百祢くんだな。これからも一つ、よろしく頼むよ」
潮と加百祢、二人は楽しそうに顔を見合わせた。
二人によって整えられたこの舞台に集められた彼らはどのような物語を作り上げてゆくのか。
人によれば良縁となるかもしれない。悪縁となるかもしれない。
予想のできない未来に二人は想いを募らせた。
楽しい楽しい恋愛の舞台が今、幕を開ける──……。
【僕と危険人物のCP戦争 13期】
GM:盛り塩/ろく

*開幕──!
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