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4月22日の正午、朝憬市立望海中学校の二年生である燎星心羽(かがりぼしここは)は、弁当箱を持って校舎の屋上へと階段を駆け上がっていた。ブレザーの制服が跳ねることも構わず、四角く区切られた螺旋階段を行き交う他の生徒や教員たちを躱して走る姿は、その都度彼らを振り返らせる。しかし心羽は人にぶつかりそうな時は「ごめんなさいっ!」と咄嗟に謝りこそすれど、脚を止めることはなかった。屋上に繋がる扉、そこに指す光が近づく。そうして扉のドアノブに手をかけて開くと同時に息を切らせたまま心羽は言った。
「ごめん遅くなった!」
「待ってたよ、こっちゃん」
屋上で待ち合わせていた親友―――安純日菜(あずみひな)が陽気に返して心羽を迎えた。その直ぐ傍には同じく親友である中川香穂(なかがわかほ)が未だ開けることの叶わない弁当箱を持って座り込んでいる。
「おなかすいたーー!」
「ありがと香穂ちゃん、待ってくれて…早く食べよ!」
辺りに響く香穂の訴えに、心羽は二人の元に駆け寄る。思春期における自己形成に、日々の勉強や部活といった社会活動と、どうにも忙しい日々を過ごしてる彼女達にとって、それは憩いと至福の時間。少女たちはそれぞれ持参した弁当箱を開けて、各々その中身に感嘆の声を上げた。
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