これは私たちが紡いだ希望の物語 No.1 アバン 【B】 version 24
流星と焔 No.1 アバン
2021年3月20日、午前6時33分——世界に滅びの影が迫る中、少女はようやく自分の存在を肯定しようと思えた。死ぬかもしれない恐れの中にありながら、自身が世界を良くしたい”人間であること”を胸に、静かに顔を上げる。
「私、生きて私を繋いでくれたものを信じたい。もちろん健人くんも」
少女はその赤い瞳を並び立つ青年に向けて言った。その言葉に青年は少女を見遣る。あどけなさのある横顔に靡く色鮮やかな赤い髪と併せ、煌めき輝く目の光。住民が去っていき、廃墟都市となった朝憬市(あかりし)市街地に、尚も射す朝日の陽光と同じ色だった。その光に、青年はその目から一筋涙を流して返事をする。
「俺は、君を希望(ヒーロー)にしてしまった」
青年の左目の涙が朝日を反射し、少女の瞳に映った。
「それで縋って、求めてしまって…でも、だからこそ…」
その言葉と涙に少女ははにかみ、苦笑するが、その目は青年から逸らされることはない。互いに思いを告げ、受け止め合う。
「俺も生きて信じたい。俺に人として接してくれた君を」
「ありがとう。私の人らしさを見てくれて」
「ありがとう。私のこと、思ってくれて」
青年の顔が更にくしゃくしゃになる。それを見てほほ笑む少女。やがてその笑顔に吊られ、青年も静かに笑った。そのまま今一度朝日に目線を向けて、少女が一つ呟く。
「…そろそろ」
「ああ、時間だな…」
青年が返すと共に、朝日に陰りが見え始めた。同時に地の底から暗闇が立ち上がり、異形の怪物へと姿を変えた。怪物たちは群れを成して二人の居る市街地中央部の廃屋へと向かってくる。少女にはその様が、朝日を遮らんとするかのように映った。二人は互いを見遣り頷き合ったのを最後に、怪物の軍勢を見据えて高らかにその力の名を叫ぶ。
「”チェンジ・スターリードレス”!」
「我が名はリーン…貰い火の温み、ここに在り!」
少女の唱えた魔法——その神秘が星の羽衣を形成し、これを纏う少女は希望の天女へとその姿を変え、猛る青年の叫びは、その身に黒い甲虫を思わせる鎧と火の鳥の剣をその手に形成した。そして天女は右手のブレスレットの光を天に掲げる。片や甲虫は胸に携えた光を輝かせると、腕を横一文字に切って友の名を呼んだ。
「エウィグ!」
「ネーゲル!」
その喚び声に天女の従者たる不死鳥が応えて舞い降り、巨大な白い烏の異形もまた何処からともなく甲虫の下へと現れた。
「皆さま、参りましょう!」
「話、纏まったな…ほいじゃあ一丁いこうや!」
不死鳥の生真面目ながら力に満ちた言葉、そして白烏の気迫溢れる声が、天女と甲虫を奮い立たせる。
「俺に希望をくれた君に」
「健人くんや皆の幸せに」
「「未来を」」
その日、誰に知られるでもない戦いの終局へ、少女たちは駆けだしていった——。
2021年3月20日、午前6時33分——世界に滅びの影が迫る中、少女はようやく自分の存在を肯定しようと思えた。死ぬかもしれない恐れの中にありながら、自身が世界を良くしたい”人間であること”を胸に、静かに顔を上げる。
「私、生きて私を繋いでくれたものを信じたい。もちろん健人くんも」
少女はその赤い瞳を並び立つ青年に向けて言った。その言葉に青年は少女を見遣る。あどけなさのある横顔に靡く色鮮やかな赤い髪と併せ、煌めき輝く目の光。住民が去っていき、廃墟都市となった朝憬市(あかりし)市街地に、尚も射す朝日の陽光と同じ色だった。その光に、青年はその目から一筋涙を流して返事をする。
「俺は、君を希望(ヒーロー)にしてしまった」
青年の左目の涙が朝日を反射し、少女の瞳に映った。
「それで縋って、求めてしまって…でも、だからこそ…」
その言葉と涙に少女ははにかみ、苦笑するが、その目は青年から逸らされることはない。互いに思いを告げ、受け止め合う。
「俺も生きて信じたい。俺に人として接してくれた君を」
「ありがとう。私のこと、思ってくれて」
青年の顔が更にくしゃくしゃになる。それを見てほほ笑む少女。やがてその笑顔に吊られ、青年も静かに笑った。そのまま今一度朝日に目線を向けて、少女が一つ呟く。
「…そろそろ」
「ああ、時間だな…」
青年が返すと共に、朝日に陰りが見え始めた。同時に地の底から暗闇が立ち上がり、異形の怪物へと姿を変えた。怪物たちは群れを成して二人の居る市街地中央部の廃屋へと向かってくる。少女にはその様が、朝日を遮らんとするかのように映った。二人は互いを見遣り頷き合ったのを最後に、怪物の軍勢を見据えて高らかにその力の名を叫ぶ。
「”チェンジ・スターリードレス”!」
「我が名はリーン…貰い火の温み、ここに在り!」
少女の唱えた魔法——その神秘が星の羽衣を形成し、これを纏う少女は希望の天女へとその姿を変え、猛る青年の叫びは、その身に黒い甲虫を思わせる鎧と火の鳥の剣をその手に形成した。そして天女は右手のブレスレットの光を天に掲げる。片や甲虫は胸に携えた光を輝かせると、腕を横一文字に切って友の名を呼んだ。
「エウィグ!」
「ネーゲル!」
その喚び声に天女の従者たる不死鳥が応えて舞い降り、巨大な白い烏の異形もまた何処からともなく甲虫の下へと現れた。
「皆さま、参りましょう!」
「話、纏まったな…ほいじゃあ一丁いこうや!」
不死鳥の生真面目ながら力に満ちた言葉、そして白烏の気迫溢れる声が、天女と甲虫を奮い立たせる。
「俺に希望をくれた君に」
「健人くんや皆の幸せに」
「「未来を」」
その日、誰に知られるでもない戦いの終局へ、少女たちは駆けだしていった——。