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青年
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ある夜、美しい星空の下、旅人の少女を見つけた青年。 かつて正義の味方という夢を騙りながら、自らの無力に心砕けた者。 少女と通じ合ったことで、絆の証として、ある”ブレスレット”を手渡される。 これをそれまでの自身への報酬とし、”独りよがりの優しさ”を置いて数年――。 倦怠は、彼自身の内を虚ろに変えていた。 しかし平穏だった日常は、突如現れた怪物によって破られる。 その時、少女との絆のブレスレットは彼に”星の羽衣”を与え、その運命の導きとなる。 青年は事の先に、何を見るのか。 少女との優しさにもう一度会えるのか。 ――――――――――――――――――――――――― 星の羽衣 その邂逅の夜、手渡されたブレスレットは、皮肉にも青年の心にあった憬れを実体化させる。そこから溢れた光は、神秘で構成された衣となり、彼の身はこれを纏う。そしてその剣で魔を祓っていく。 憬れ——かつて青年が憧れた正義の味方たち。その原点である烏天狗と骸骨。 何処かそれを思わせる、変化した自身の姿を、彼は自嘲するしかなかった。 ”よりにもよって…どうしろってんだ、くそ――。” しかし、やがて怪物騒ぎは周囲の人間も巻き込んでいく。辛くも対処できるのは自分のみ。そこに高尚な精神などなく、刃に宿る業に青年の手は縮み上がり、その足は竦む。 「葛藤しようが信念持とうが、必要なのは対処だ」 それでも尚、問わずにいられない。正体不明の怪物たち、絆に与えられた力の意味、事の狭間に見える誰かの姿。それを追い、彼は戦う。 あの時、自身の夢にとどめを刺したものに、疼く痛みを抱えながら。 ――――――――――――――――――――――――― 煌輪アイギス 少女から青年に手渡された魔法のブレスレット。 "憬れ"と"繋ぎ"の星光結晶(憬晶石と繋晶石)を宿す。 「この夜にあなたが私に優しくしてくれたこと、覚えててね――」 「…君がとても綺麗な人だってことなら、覚えとくよ」 アイギスに触れ、思い返されるは少女と自分の言葉。その手の温み。自分に優しさというものがあったとして、最早崩れ去ろうとしていた矢先では、そんな日和った返ししかできなかった。 その結晶から放たれる光――憬れを紡いだ衣は、あの言葉に応えられなかった自分に与えられた罰か。 しかしそれ以上は考えを振り払う。彼女は濡れた瞳を伏せながら、それでも自身の事より、こちらのことを思ってくれていた。 少なくともそんな彼女のくれた優しさを、罪悪感で受け取るなど… 「それこそ、ふざけた話だ」 救いを夢み、無力に涙し、苦悶に膝を着いて、心は砕けた。しかし星は未だ瞬く。光に惹きつけられるこの命はまるで羽虫か。しかし仮に無様であろうとも、羽虫は世界を棄てられぬ。まだそこにある星の光を棄てられぬ。 「私たちが友達になったこと、どうか忘れないで――」 思い出されたその心に、アイギスは共振する。その熱に、青年は少女と手を繋いだ時を思った。 =================== 少女との件(くだり)が少々くどいかと思ったので、削っています。 もし買ってくれていたら悪しからず…
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