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第一章 1話 シーン3
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商店街を抜け、大通りを跨いだ先、西に向けてしばらく行くと、アレグロ音楽団の集会所が見えてくる。地元の楽団の一つであるこの楽団は、15年前に結成され、心羽は7年前に入団した。最近こそ人数は伸び悩んでいるが、一人ひとりのレベルが高く、よく季節のイベントなどに招待がかかる。その集会所となっている家屋は、通常より少し大きく造られ、用いられる石と木材の配分を、幾らか木に寄せており、温かみのある空間を演出していた。心羽はノックしてから鍵のかかっていない集会所の玄関の戸を開ける。 「あっ心羽、おはよう!」 「おはようございまーす」 早くから来ていたメンバーとすれ違いざまに挨拶を交わし、心羽はアレグロのメンバーがそれぞれの楽器や荷物を置いている準備室へと向かう。準備室の戸を開くと、部屋の奥、窓際の左手に見えるのは、ホルンやトロンボーン、チューバやトランペットといった、種々の金管をケースに入れてしまってある棚。そこの足元に荷物を置いて、棚の上にある自分のトランペットの入ったケースを取りだす。そして同じようにして置かれたのであろう荷物の数を数え、集まっているメンバーの数を把握する。その数5つ。 「今日はまだ5人か…これから集まるといいな…あっ、はるちゃんも来てる!」 遥香のバッグを目にしてそう認識し、心羽は楽器ケースを持って石造りの階段を上がり、3階のベランダに向かう。それは二人のいつもの場所。やがて聞こえ始めたアルトサックスの音を受け、少し息が上がりながら最後の一段を上がれば、その場所から青空に向けて演奏しているパステルパープルの瞳と髪の少女———遥香を見つけた。そうして心羽が小走りで遥香のもとに向かうと、それに気づいて演奏と中断した遥香と二人、微笑みながら挨拶を交わす。 「おはよーはるちゃん!」 「こっちゃんおはよー」 そうして心羽は遥香の隣に座ると、楽器ケースからトランペットを取り出した。遥香のアルトサックスと共に、その金の艶が朝日の光を反射する。 「今日は人が少ないね。いつもならこの時間にはみんな来てるのに…」 話しながら、心羽はトランペットに息を通し、冷えた金属の管を温めた。その眉はほんの少し下がる。 「この人数じゃ合奏は無しかぁ…」 「まだわからないけど、かもしれないね…」 その声音もまた、先の挨拶のトーンから幾らか下がった心羽。遥香も同様に応えるが、すぐに切り替えようと別の話題を振った。 「そういえばさ、なんか昨日の夜、流れ星が落ちてきたらしくて…」 「あーそれ知ってる!」 視線を青空に少し向けつつ話す遥香だったが、心羽はその話題にすぐさま食いついてきた。矢継ぎ早に心羽も話しだす。 「私も見たよ!空がぱあっと光ってさー…」 「ハイハイ落ち着いて。わかったから。それでね…」 心羽が話を取ってしまいかねなかったのを諫めて、遥香が説明を続ける。 「うちの宗教の偉い人が残した大予言?と昨日の流れ星がぴったり重なって、今朝起きたらうちの教会にたくさん押しかけてて…それで、あまりの人数にびっくりしちゃって、アレグロに逃げてきたの」
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