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鴉と火の鳥
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鴉は自分にも世界にも愛想が尽きていました。 その昔、ある雪山で見た優しく、気高く、美しい旅人の姿に、鴉は魅せられていました。 旅人は、切ないくらい優しい笑顔をしていました。 その姿が、烏にはとても尊く、美しいものに見えたのです。 そんな旅人の姿に、鴉はとても追いつくことは叶わないと分かっていました。 それが分かって尚、鴉はせめて心だけでも優しく、気高く、美しくなりたいと思いました。 ですが、やっぱり鴉はそうはなれませんでした。 鴉は出来るだけたくさんの動物の話を聞き、話しました。 どうやって優しく生きていくか、どうすれば優しいと言えるのか。 ですが他の動物に寄り添うには、鴉の体は黒く薄汚れていました。 そして、他の動物の思いを聞き、頷き、言葉を返すには、鴉のしゃがれた声では難しかったのです。 鴉はなにも出来ない自分にとうとう疲れてしまいました。 それと共に鴉は森の動物と上手くやっていくことが出来なくなりました。 心が苦しくなった鴉は、とある木の上だけで過ごすようになりました。 そんなある日、鴉は雪山の旅人のことをふと思いだし、泣き出しそうにしていると空を舞う火の鳥と出会いました。 火の鳥は鴉の下に舞い降りて言いました。 「他の誰でもない鴉さんが生きてることを、誰も"違う"とは言えないよ。いいんだよ、あなた自身も…いいんだよ」 鴉はその言葉を、どう受け止めようかと思いながらも、確かに自分でも"違う"とは言えませんでした。たとえ旅人のような気高さや、優しさや、美しさを持てはしなくても。 そう思って烏は火の鳥の方を見つめました。火の鳥は雪山の旅人ともまた違う、その一枚一枚が暖かく綺麗な赤い翼や、慈しみを含んだ麗しい瞳を持っていました。 そしてそんな火の鳥が、話しているうちにかけてくれた「鴉さんは、私にない素敵なものを持っているよ」という言葉。 綺麗な火の鳥が心からそんな言葉をかけてくれて、鴉はとても嬉しかったのです。 その日から、火の鳥と鴉は友だちになりました。 —————————————————————————————
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