健人パート 簡易プロット

No.1
 その日の朝、花森健人はスマホを介して目に入ってきたネットニュースを見ていた。内容は昨今、世間の関心が高まっている政治資金の消失問題の報道、いじめやパワハラ問題についての啓発記事、世界で起きている戦争に対する各国の対応、芸能人の電撃結婚、スポーツの試合内容と選手へのインタビュー。世の混沌と面倒さをスワイプし、健人は溜息を吐く。
 「別に、俺の所に持ってこられてもな」
彼は辟易していた。誰がどうとか、基本的にどうでも良かった。またそんな自分自身に虚ろさを抱くも、それもまた澱んだ意識と惰性に沈んでいく。ただ、名ばかりのキャンパスライフ——漠然としたその日暮らしを続けるしかないだけだった。日々重さが増していく身体を英道大学へと運び、最早苦痛と化した夢について、教授達の講義を聞き流す。
「死のうかな」
途方に暮れて漂う厭世に、健人は小さく呟いた。
 手ごろな死に場所が無いかと考えるが、何処に行っても居るのは人間。恐らくは適当に騒ぐ奴しかおらず、鬱陶しい。そう考えつつも辿り着くは夜の大学、屋上。一瞬脳裏に浮かぶは愛する母の姿、親友の笑顔、いつかの夜に抱いた切なさ。ふと目を伏せるも程なく鉄柵に手が掛かる。その時健人の身体は何かに引き摺り降ろされる。天を仰ぐとそこに、異形の存在がいた。
 驚嘆に声が上がるもすぐに異形の手に口を塞がれ、健人は胸を抉られる。訪れる死への恐怖をようやく認識するも嗤う余裕もなかった。胸から浮かぶ闇色の中、健人の目はその焦点を何処かへと飛ばしていく。ただ下らぬ死から逃れるように。それ故の幻覚か、一瞬左腕に暖かな光を感じた。
 
 光に宿る優しさ、忌むべき呪い。混ざりゆき目覚める力、内から立ち上がる何か。
 
次に健人が意識を取り戻した時、異形は夜に溶ける黒い靄と共にその姿を消していった。
「生きているのか?」
不可思議に過ぎる状況に自身を見るも、暗闇故かその輪郭さえも朧気だった。夢だろう?ただの悪夢だろう?別にこれ以上いいじゃないか、勘弁してくれ。怖気に駆け出すも、やがて最寄りの街灯に照らされる自身を見る。そこに居たのは自身がデジタル画に描いた想像と、同じ姿をした花森健人の姿。混乱した自身の口から独りでに、力なく歪んだ音が零れ出ていた。

コメント1:ギル

ギルです。すみませんモル…過去一狂ったNo.1ですね、これ(;'∀')

END

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