これは私たちが紡いだ希望の物語  No.1 2 / 2 version 3

2022/07/23 18:39 by someone
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これは私たちが紡いだ希望の物語  No.1 2 / 3
「なんだよ、これ…」
気が付いた時には自身の姿が変化し、それまでの花森健人ではなくなっていた。その変化を見ると、甲虫を思わせる装甲が身体に纏わりついている。それは右腕に槍を思わせる突起を形成し、また鋭い爪も伸びていた。左足の装甲も、具足のようになっている。そして変化の見られない左手で右顔面に触れてみると、仮面ともおぼしい大きなレンズが備わっていた。
そのレンズ以て視認できる前方から、こちらを見据える異形の怪物らの姿がより明確に視認できた。
悪魔はどういうわけか隻腕となっていたが、獅子のたてがみのように逆立つ髪を靡かせ、その鋭利な眼を健人に向けている。ヤギとその角の意匠思わせる身体震わせ、強い怒りを露にしていた。その傍らでクモの異形は黒い四つ目の付いた顔を僅かに俯かせ、肩を竦めている。その四肢に備え付けられた節足が暗い中で怪しく蠢く。
気が付いた時には自身の姿が変化し、それまでの花森健人ではなくなっていた。その変化を見ると、甲虫を思わせる装甲が身体に纏わりついている。それは右腕に槍を思わせる突起を形成し、また鋭い爪も伸びて腕全体が一回りは肥大していた。左足の装甲も、具足のようになっており、鉤爪が足の先端と踵に備わっている。そして変化の見られない左手で右顔面に触れてみると、仮面ともおぼしい大きなレンズが備わっていた。
そのレンズ以て視認できる前方から、こちらを見据える異形の怪物らの姿がより明確に視認できた。
ヴェムルアと呼ばれた悪魔はどういうわけか隻腕となっていたが、獅子のたてがみのように逆立つ髪を靡かせ、その鋭利な眼を健人に向けている。ヤギを想起させるその姿、身体震わせ、強い怒りを露にしていた。その傍らでクモの異形は黒い四つ目の付いた顔を僅かに俯かせ、肩を竦めている。その四肢に備え付けられた節足が暗い中で怪しく蠢く。
「だから自分の仕事以上のことなんてするもんじゃない」
「ほざいている場合か。始末するぞ」
「…全く、仕方ありませんな」
毒づくクモを無視し、悪魔が左腕を掲げた。その左手から夜のそれ以上の暗闇が吹き上がり、そして周囲に降り注いだ。世界がより黒く塗り変わっていく。毒づくクモを無視し、悪魔が左腕を掲げた。その左手から夜のそれ以上の暗闇が吹き上がり、そして周囲に降り注いだ。世界がより黒く塗り変わっていく。そこはそれまであった、只の田舎道ではなくなろうとしていた。健人は自身に起こる超常的な事象に目を見開いて息を飲む。しかし我に返り、竦み上がって震える脚を、強引ながらも動かしてそこから逃れようと駆けだした。脚の運びが以上に軽い。一足一足が飛んでいるようだ。それまでの自身の身体とは明らかに重さや動きのしなやかさが違った。だが、その運動機能を以てしても、暗闇に包まれゆく世界の外に出ることは叶わない。
「——っ!なんの冗談だよ、これ!?」
怯え、震えと共に叫ぶ健人だったが、直後に衝撃と共に自身の身体が吹き飛ばされるのを感じた。反射的に衝撃を感じた方を見ると、そこに居たのはアハトと呼ばれたクモの姿。その節足の動きも加わった蹴りが、健人の鳩尾を捉えたためだった。直後に背後に現れたヴェムルアが、棍のような獲物を健人のこめかみ目掛けて振るう。
”右から来るぞ、おい!”
瞬間、何処からともなく響く声と共に反応し、咄嗟に身を竦ませながらも肥大した右腕で棍の一撃を防いだ。しかし及び腰であった故か、衝撃を殺しきれずに大きくよろめき後退する。異形二体はそこを逃さず、追撃にしてきた。襲い来る二体の姿に、恐怖のまま動くことができない。その時先の”声”がまた響いた。
”キーホルダー握れ、早う!”
「——っ…!」
左手を辛うじて動かし、胸元を握る。首から下、シャツの中に着けていたキーホルダーを掴むと、再度赤い光が発し、暗闇の世界の中で閃いた。叫びながら身を丸め、強く目を閉じる。
「捕えてすぐここに引きずり込む手はずではあったが、こんなことは想定外だ…!」
「…それも大概にしてもらいたい」
耳に届く異形二体の声。それを知覚する意識はまだあった。健人は恐る恐る目を開けると、そこにあったのは大きな白い腕と二振りの太刀。自身の背後から伸びて異形らの攻撃を防ぐそれに、すぐ背後を振り返る。大きな白銀の体躯を持つカラスがこちらを向いて言った。
「早う動け!死にたいんか!!」
その言葉に慌てて三者の間を抜け出して逃れようとする健人を、尚もヴェムルアとアハトは追う。しかしカラスの巨体もまた、健人の動きに追随していた。
「何でこっちに来るんだよ!?お前もあいつらの仲間か!?」
「お前が宿主だからじゃ、あいつらと一緒にすなや!それより構えんのか?逃げきれんぞ」
自身に起きた不可思議な現象を問うも、訳の分からない言葉が飛んできた。
      

「なんだよ、これ…」
気が付いた時には自身の姿が変化し、それまでの花森健人ではなくなっていた。その変化を見ると、甲虫を思わせる装甲が身体に纏わりついている。それは右腕に槍を思わせる突起を形成し、また鋭い爪も伸びて腕全体が一回りは肥大していた。左足の装甲も、具足のようになっており、鉤爪が足の先端と踵に備わっている。そして変化の見られない左手で右顔面に触れてみると、仮面ともおぼしい大きなレンズが備わっていた。
そのレンズを以て視認できる前方から、こちらを見据える異形の怪物らの姿がより明確に視認できた。
ヴェムルアと呼ばれた悪魔はどういうわけか隻腕となっていたが、獅子のたてがみのように逆立つ髪を靡かせ、その鋭利な眼を健人に向けている。ヤギを想起させるその姿、身体に震わせ、強い怒りを露にしていた。その傍らでクモの異形は黒い四つ目の付いた顔を僅かに俯かせ、肩を竦めている。その四肢に備え付けられた節足が暗い中で怪しく蠢く。
「だから自分の仕事以上のことなんてするもんじゃない」
「ほざいている場合か。始末するぞ」
「…全く、仕方ありませんな」
毒づくクモを無視し、悪魔が左腕を掲げた。その左手から夜のそれ以上の暗闇が吹き上がり、そして周囲に降り注いだ。世界がより黒く塗り変わっていく。そこはそれまであった、只の田舎道ではなくなろうとしていた。健人は自身に起こる超常的な事象に目を見開いて息を飲む。しかし我に返り、竦み上がって震える脚を、強引ながらも動かしてそこから逃れようと駆けだした。脚の運びが以上に軽い。一足一足が飛んでいるようだ。それまでの自身の身体とは明らかに重さや動きのしなやかさが違った。だが、その運動機能を以てしても、暗闇に包まれゆく世界の外に出ることは叶わない。
「——っ!なんの冗談だよ、これ!?」
怯え、震えと共に叫ぶ健人だったが、直後に衝撃と共に自身の身体が吹き飛ばされるのを感じた。反射的に衝撃を感じた方を見ると、そこに居たのはアハトと呼ばれたクモの姿。その節足の動きも加わった蹴りが、健人の鳩尾を捉えたためだった。直後に背後に現れたヴェムルアが、棍のような獲物を健人のこめかみ目掛けて振るう。
”右から来るぞ、おい!”
瞬間、何処からともなく響く声と共に反応し、咄嗟に身を竦ませながらも肥大した右腕で棍の一撃を防いだ。しかし及び腰であった故か、衝撃を殺しきれずに大きくよろめき後退する。異形二体はそこを逃さず、追撃にしてきた。襲い来る二体の姿に、恐怖のまま動くことができない。その時先の”声”がまた響いた。
”キーホルダー握れ、早う!”
「——っ…!」
左手を辛うじて動かし、胸元を握る。首から下、シャツの中に着けていたキーホルダーを掴むと、再度赤い光が発し、暗闇の世界の中で閃いた。叫びながら身を丸め、強く目を閉じる。
「捕えてすぐここに引きずり込む手はずではあったが、こんなことは想定外だ…!」
「…それも大概にしてもらいたい」
耳に届く異形二体の声。それを知覚する意識はまだあった。健人は恐る恐る目を開けると、そこにあったのは大きな白い腕と二振りの太刀。自身の背後から伸びて異形らの攻撃を防ぐそれに、すぐ背後を振り返る。大きな白銀の体躯を持つカラスがこちらを向いて言った。
「早う動け!死にたいんか!!」
その言葉に慌てて三者の間を抜け出して逃れようとする健人を、尚もヴェムルアとアハトは追う。しかしカラスの巨体もまた、健人の動きに追随していた。
「何でこっちに来るんだよ!?お前もあいつらの仲間か!?」
「お前が宿主だからじゃ、あいつらと一緒にすなや!それより構えんのか?逃げきれんぞ」
自身に起きた不可思議な現象を問うも、訳の分からない言葉が飛んできた。