--- Title: ルナティック・クライシス!仮シナリオ Author: zefuto_enjiro_syamon Web: https://mimemo.io/m/Awa3QlLKRro1jvq --- それはある月夜の晩に起こったことだった。犬の散歩をしていた1人の男性がある家の前を通りかかる。しかし、突然、ペットの犬がけたたましく吠え始める。 男「どうしたポチ?とりあえず近所迷惑だから落ち着け…うわぁっ!?なんだあれは!?」 犬が吠えている方向を見た男はあまりの恐怖に犬を引きずらんばかりの勢いで一目散に逃げ出した。その男が目にしたものとは身体は人間だが、その臀部からは尻尾が生え、顔は狼のまさに人狼が立っていたのである。 ローラ「大変だわ…私の正体を知られちゃった…早くこの街から出ないと…」 彼女の名はローラ。漢字では『狼羅』と書く。その字の通り彼女は人狼である。満月を見ると尻尾や牙が生えて暴走してしまうのだ。ローラは急いで荷物を纏めて家を出る。この家はどうやら空き家らしいがローラがこっそり住み着いていた。しかし、存在が明るみになってしまっては大変なことになると思い、街を出ようとする。その時だった。 博士「君、こんなところで何してるんだ?こんな真夜中に出歩くなんて…」 九頭龍博士がたまたま車で通りかかり、ローラに声をかけた。ローラは切羽詰まった状況であったため、ついこう言ってしまう。 ローラ「た、助けてください…!」 困っている人を見過ごせない博士は九頭龍研究所に彼女を保護する。やがて談話室に宗麟やヴィヴィル、クシナまで集まってローラの話に耳を傾けた。彼女はまだアイヌ民族が北海道にいた頃から存在していた人狼の一族の生き残りだという。しかし、シャクシャインの戦いでアイヌ民族が松前藩の支配下に置かれた際にその混乱の中、一族と離れ離れになってしまったのであった。その後、本州に流れ着いたローラは各地を転々としながら生活していたという。 宗麟「シャクシャインの戦い?つまり君は360年くらい前から生きてるってことかい?」 ローラ「そうなの。人狼の一族の平均寿命は500年以上だからね。ああ、皆は今どうしてるかしら…心配だわ。」 博士「わかった。それなら私が北海道まで送り返してあげよう。実は九頭龍研究所が管理する観測所が北海道にあってな。その土地の一部を君に貸してあげよう。仲間が見つかるまでの生活拠点にするといい。」 ローラ「え!?いいの?ありがとうございます!」 北海道に帰れるとわかって顔に笑みが浮かぶローラ。ただし、北海道行きの船を手配するのに丸一日はかかるため、それまでにローラを匿わなくてはならない。だが、研究所で匿うのはリスクが高い。なぜなら早くも研究所に『人狼を何とかしてくれ』『早く駆除してくれ』などの依頼が住民から殺到しているからだ。 宗麟「それなら俺の知り合いに不思議な力を持った娘がいるから掛け合ってみるぜ。何でも魔法少女らしいからな。ローラを上手く隠してくれるかもしれない。」 ヴィヴィル「魔法少女と知り合いなの宗麟?いや、人造人間の私が驚くのはちょっとおかしいけど…」 宗麟が向かった先は『相沢 涼』という名のフェスタ生の家である。どうやら宗麟と何度か交流があるらしく、さらに魔法少女であるという理由で、ローラを街の住民から隠してほしいと頼むのであった。涼は快く承諾してくれたため、安心する宗麟。だが、街には不穏な空気が流れていた。 真戸野博士「何?人狼が現れた?なるほど…ならばその人狼を我が最新技術で駆逐してやろうではないか!」 かつてヒエロニムスマシン(※聖槍!白銀鏡の騎士参照)を開発したものの、その発明が危険視されて失脚した真戸野博士。彼は名誉挽回のためにローラを自らの技術で倒すというとんでもない計画を立てていた。博士は倉庫から2体のサイボーグを引っ張り出す。 真戸野博士「私のサイボーグはまだまだたくさんあるが今回の相手は犬ころ1匹だ。『ガラティーンΣ』、『アロンダイトγ』だけで十分だろう。」 サイボーグの目に光が灯った。 一方その頃、涼は宗麟からローラを連れて街の港まで来て欲しいと連絡が来たため、ローラと共に家を出て港を目指す。街を堂々と歩いていてもローラが怪しまれないのは涼の魔法か何かの力で人々の意識を逸らしている…つまり意図的に存在感をなくしているということである。要するにドラ○もんの石こ○帽子のような効果である。 涼「もうすぐ着くよ。だから、もう少し頑張って。」 ローラ「貴女、すごい力が使えるのね。いや、人狼の私が言えたことじゃないか…」 だが、港で待っていたのは船…と2体の鋼鉄製のサイボーグを侍らせた真戸野博士だった。 真戸野博士「待っていたぞ、人狼。私はお前をずっと追跡させてもらっていた。さあ、人々の安寧を脅かす化け物は死んでもらおう!」 涼「そんな!どうしてローラを追跡することができたんだい?」 真戸野博士はまず、街中の監視カメラをハッキングし、映像をすべてチェック。さらに、アロンダイトγにレーダーをセットし、居場所を特定したのであった。涼の魔法はどうやら機械の目までは誤魔化せなかったようだ。やがて間髪入れずにガラティーンΣが腕のマシンガンから弾丸をローラに向かって放つ。涼とローラは何とか港に置いてあるコンテナに身を隠して事なきを得るが、散らばった弾丸を見てローラは戦慄する。 ローラ「これは…銀の弾丸…!人狼の弱点でもあるわ…!」 涼「あの博士は本気で君を殺す気だ…!」 宗麟「涼!大丈夫か!?」 そこへ虫が知らせて駆けつけたリントヴルムがやってきた。リントヴルムは涼とローラを守るようにして立つ。 宗麟「何も罪を犯してないのに人狼ってだけで殺すなんておかしいだろ!」 真戸野博士「はっ、血迷ったかリントヴルム。このまま放置すれば奴は必ず我々に危害を加えるだろう。第一、人狼は人間を食う、あるいは殺人を楽しむような者ばかりだ。私のデータに間違いはない!」 そして、2体のサイボーグをリントヴルムに差し向けて真戸野博士が叫ぶ。 「邪魔をするなら先に君から潰してやろう!リントヴルムに勝てばこのサイボーグの性能が高いことのへの証明になる!」 まずは腕に剣型の武器を装備したアロンダイトγがリントヴルムに斬りかかり、さらに遠距離からガラティーンΣがマシンガンを放ち、まさに死角のない攻めを見せる。しかし、リントヴルムもただではやられない。リントヴルムもマシンガンをかわしつつ、アロンダイトγに拳や蹴りを入れていく。そしてついにアロンダイトγをリントヴルムが追い詰めた。しかし、ここで恐ろしい事態が起きた。 ローラ「ヴ…ヴ…ヴァァァ!!」 涼「どうしたの、ローラ!?まさか…」 何とローラが暴走を始めてしまった。サイボーグ達との戦いの最中、日が暮れてしまい月が昇り始めたのであった。しかも、運悪く今日は満月の日だった。ローラから尻尾や毛皮が生える。ローラは涼の制止も聞かず、リントヴルムを背後から強襲。かつてない3対1の戦いに発展してしまった。 真戸野博士「ちょうどいい!リントヴルムと共に纏めて撃ち殺せ、ガラティーンΣ!」 暴れるローラを押さえつけるも、ガラティーンΣのマシンガンを食らうリントヴルム。さらにアロンダイトγも接近し、もはや万事休すか…だが、ついにここで涼が動き出す。 涼「今まで隠してたけど…この状況は黙って見てられない…助けるよ…リントヴルムも、ローラも!」 涼の身体が光輝く。そして、変身。その名も『グリーンセイバー』。彼女…いや、彼の真の力である。グリーンセイバーはまず、剣でガラティーンΣのマシンガンを弾き、アロンダイトγを突き飛ばす。さらに、ローラに手をかざし、彼女の動きを止めた。 宗麟「すげえ…これも涼の魔法か。ローラが放心状態になったみたいだ。」 そして、リントヴルムはガラティーンΣ、グリーンセイバーはアロンダイトγにそれぞれ立ち向かっていく。まず、リントヴルムはガラティーンΣのマシンガンを持ち前のフットワークでかわし、パンチを一発。怯んだガラティーンΣにとどめの一撃、『ドラグーンライトニングブレイク』を食らわし、爆破させた。一方のグリーンセイバーも華麗な剣戟でアロンダイトγを圧倒。袈裟斬りで斬り伏せた後、とどめの必殺技『ファイナルグリーンストラッシュ』で一気になぎ払い、爆破させた。 宗麟「涼…これが君の真の力だったのか。」 涼「うん。でもまだ解決してないことがある。ローラを助けなくちゃ!」 グリーンセイバーは魔法を解除する。すると、ローラが再び暴れ出した。しかし、グリーンセイバーは優しく寄り添い、ローラの肩に手を置いて語りかける。 涼(大丈夫…君を受け入れてくれる場所は必ずあるよ。リントヴルムも、九頭龍博士も君を受け入れてくれたように…もちろん僕だって…) 優しいグリーンセイバーの言葉と心を癒す魔法…その2つが重なってローラを正気に戻した。 ローラ「グルゥ…グア…うっ、うっ、ありがとう…」 唸り声がいつの間にか咽び泣きに変わっていた。 宗麟「まったく…こんなことは俺にはできない芸当だ。やっぱり涼を連れてきて正解だったぜ。」 その頃、自慢のサイボーグを一気に2機も失った真戸野博士は意気消沈しながらとぼとぼ帰っていったという。おそらくもうローラを追いかける気力も無いのだろう。 改めてローラは九頭龍博士が手配してくれた北海道行きの船に乗る。ローラは宗麟と涼に深々と頭を下げてお礼を言う。 ローラ「2人とも…私のために本当にありがとう!私は貴方たちのこと絶対に忘れない。辛いこと、苦しいことがあったら、諦めずに戦った2人を思い出すわ。」 最後は笑顔で手を振り、船に乗り込むローラ。それをまた笑顔で見送る宗麟と涼であった。 宗麟「ところで今さらなんだが…涼。君、男だったのかい?」 宗麟のストレートな質問に…黙って頷く涼であった。最後の最後で2人の間に変な空気が流れた。 (完)