これは私たちが紡いだ希望の物語 No. version 70
流星と焔 No.1 1/2
朝憬市望海町に異形の怪物が出現した——。燎星心羽の下にその報せが届いたのは、2021年4月12日の午後3:20過ぎのことだった。
朝憬市立望海中学校で化学Ⅰの授業を受けていた彼女のブレスレットが淡く光る。それは心羽の従者からの合図。気は張っていたが、よもや授業中に合図が来るのは想定外だった。慌ててブレスレットをしていた右手首を左手で塞ぐ。
”もう、エウィグ何で今なの…——”
話の聞き取りやすい化学の担当教師の飯山と、この授業内容を好ましく思っていた心羽は、口惜しい思いと共におずおずと言った。
「先生、すみません…」
「燎星さん、どうしたの?」
おっとりとした女性である飯山の優しい声が続いて響き、その目は心羽の様子を窺っていた。
「ちょっと気分が良くなくって…」
右手首を左手で尚も抑えて辛うじて言葉を続けるも、気が咎める。
「こっちゃん、大丈夫?」
「保健室、一緒に行こうか?」
自身の隣の席に座っていた親友の安純日菜と中川香穂の二人が、心羽の様子を窺いながら言った小声に、「ううん、大丈夫」と返す。しかし周囲の生徒の注目を浴びつつ、嘘をつかねばならぬ状況を心羽は恨めしく思って俯いた。飯山の目にはそれがどう映っただろうか。
「そう、時間も時間だけど…」
「早退でも、いいですか?」
こちらの意図をそれとなく汲んでくれたのか、渡りに船の思いで言った心羽の言葉に飯山は「しょうがない」と前置きして応じた。
「担任の羽原先生には…」
「私達が伝えとく。先生、いいですか?」
言いかけた飯山の言葉に、日菜と香穂が反応した。
「ありがとう、ごめんね…先生、失礼します」
心羽は親友二人と飯山に、お礼と謝罪そして挨拶をすると、静かに理科室を抜け出した。
そのまま自身の教室である2年A組に置いた荷物を取り、心羽は周囲に気を払いつつも校舎の屋上へと駆け上がっていく。そうして屋上の出入り口の戸を開けると、従者は既にそこに居た——正確には屋上の鉄柵に留まっていた。
「お嬢様、エクリプスです!」
「こんな時間からなの!?」
朝憬市望海町に異形の怪物が出現した——。燎星心羽の下にその報せが届いたのは、2021年4月12日の午後3:20過ぎのことだった。
朝憬市立望海中学校で化学Ⅰの授業を受けていた彼女のブレスレットが淡く光る。それは心羽の従者からの合図。気は張っていたが、よもや授業中に合図が来るのは想定外だった。慌ててブレスレットをしていた右手首を左手で塞ぐ。
”もう、エウィグ何で今なの…——”
話の聞き取りやすい化学の担当教師の飯山と、この授業内容を好ましく思っていた心羽は、口惜しい思いと共におずおずと言った。
「先生、すみません…」
「燎星さん、どうしたの?」
おっとりとした女性である飯山の優しい声が続いて響き、その目は心羽の様子を窺っていた。
「ちょっと気分が良くなくって…」
右手首を左手で尚も抑えて辛うじて言葉を続けるも、気が咎める。
「こっちゃん、大丈夫?」
「保健室、一緒に行こうか?」
自身の隣の席に座っていた親友の安純日菜と中川香穂の二人が、心羽の様子を窺いながら言った小声に、「ううん、大丈夫」と返す。しかし周囲の生徒の注目を浴びつつ、嘘をつかねばならぬ状況を心羽は恨めしく思って俯いた。飯山の目にはそれがどう映っただろうか。
「そう、時間も時間だけど…」
「早退でも、いいですか?」
こちらの意図をそれとなく汲んでくれたのか、渡りに船の思いで言った心羽の言葉に飯山は「しょうがない」と前置きして応じた。
「担任の羽原先生には…」
「私達が伝えとく。先生、いいですか?」
言いかけた飯山の言葉に、日菜と香穂が反応した。
「ありがとう、ごめんね…先生、失礼します」
心羽は親友二人と飯山に、お礼と謝罪そして挨拶をすると、静かに理科室を抜け出した。
そのまま自身の教室である2年A組に置いた荷物を取り、心羽は周囲に気を払いつつも校舎の屋上へと駆け上がっていく。そうして屋上の出入り口の戸を開けると、従者は既にそこに居た——正確には屋上の鉄柵に留まっていた。
「お嬢様、エクリプスです!」
「こんな時間からなの!?」