千想の魔法 4.影の魔術師 version 1
千想の魔法 4.
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##### 4-1 あなたは誰
心羽は果てなく深淵の続くだだっ広い空間の中にいた。どこか見覚えがあるけれど思い出せない光景に囲まれ、7色に輝く小さな泡がそこら中にぽつぽつ浮いている。
地面のない謎の空間の中を進むと、突然心羽の目の前にベンチが現れる。ベンチの上に置かれた1冊の本を手にとり、腰掛けて最初のページを開く。何も書かれていない白紙のページが開かれると、そこへ勝手に文字列が書き込まれていく。
“こんなふうにはなりたくなかった”
“俺になにができた?”
“最初から、君と関わるべきじゃなかったんだ”
そこに書かれたのは後悔と懺悔、そして絶望。
心羽はふいに、その文字列を指でなぞった。すると、その指の下から紡がれるように新たな文字列が現れる。
“何があったの?”
“あなたは誰?”
##### 4-2 絶対に阻止しなければ
翌朝。小屋の2階のベッドで目が覚めた心羽は、さっきまで見ていた夢の内容を思い出していた。絶対に続きがあるはずなのに、ぶつ切りにされたような感覚。夜空に似たあの光景も、間違いなくどこかで見覚えがある。しかしどれだけ考えてもあの光景に心当たりはないし、夢の内容も意味不明で理解できない。
既に起きていたエイミーと挨拶を交わし、朝食をとる。エイミーは周囲に起きている人がいないことを確認すると、真剣そうな面持ちで心羽に話しかけてきた。
「あなたが探してるイジェンドって人についてなんだけど……昨日あなたが使ってたカルナ、あれもイジェンドの模倣ってこと?」
「そうだよ、あの時の私は能力も容姿もイジェンドに“変身”してた」
「髪型や身長、目の色は?」
「えーと、髪の色は赤で、毛先は肩くらいまである。身長が高くて、目の色は翠色だったかな。どうして?」
「正直に言うね。実は昨日まで、あなたを炎の魔女なんじゃないかと疑ってたの。でも昨夜、あなたはその力の正体を教えてくれた。“変身”の時の容姿もイジェンドを準拠とした姿になるのよね? だとしたら、イジェンドこそが10年前の炎の魔女なのかもしれない」
「イジェンドは、魔物を呼んで村を襲うような人じゃないよ」
「そうだけど、炎の魔女と特徴があまりにも一致しすぎてる。例え本人じゃないにしても絶対何らかの関係があるはず」
「うーん、たしかに…」
まてよ、特徴があまりにも似すぎてる…?
もし、誰かが炎の魔女と勘違いして、イジェンドを襲ったりしたら……それは絶対に阻止しなければ。
「……一刻も早くイジェンドと合流しないと!ごめんエイミー、またあとで!」
「ちょっと待って心羽ちゃん、私も行くよ!」
「えっ?」
「私もイジェンドと会ってみたい、炎の魔女に関する情報が得られるのなら…!」
「そっか…そうだよね、わかった!」
「すぐ支度するから!」
##### 4-3 きっとあの人がやったんだ
キラちゃんにナビゲートを頼み、イジェンドの方角へ走る心羽とエイミー。
「こんな早朝から何事かしら?まったく鳥使いが荒いんだから」
「ごめんキラちゃん。イジェンドは今も無事なの?」
「今向かってる場所は30分前にイジェンドが確認されたところだわ。きっとまだ焦るほどの事態は起きていないわよ」
「30分前か、よかった…」
「私にはそのキラちゃんって子が喋ってるのは聞こえないんだけど」
「そうだった…キラちゃんによると、イジェンドは30分前には無事が確認されてるって!」
「実は昨日、影魔生産装置が誰かに壊されたって聞いた時、私は真っ先にイジェンドが浮かんだの。きっとあの人がやったんだって。でももしそうなら、イジェンドは猟団の活動範囲にまで入ってきてたってことでしょう? だから、皆が活動を始める前にイジェンドと合流しなくちゃ」
目次4-1 あなたは誰4-2 絶対に阻止しなければ4-3 きっとあの人がやったんだ
4-1 あなたは誰
心羽は果てなく深淵の続くだだっ広い空間の中にいた。どこか見覚えがあるけれど思い出せない光景に囲まれ、7色に輝く小さな泡がそこら中にぽつぽつ浮いている。
地面のない謎の空間の中を進むと、突然心羽の目の前にベンチが現れる。ベンチの上に置かれた1冊の本を手にとり、腰掛けて最初のページを開く。何も書かれていない白紙のページが開かれると、そこへ勝手に文字列が書き込まれていく。
“こんなふうにはなりたくなかった”
“俺になにができた?”
“最初から、君と関わるべきじゃなかったんだ”
そこに書かれたのは後悔と懺悔、そして絶望。
心羽はふいに、その文字列を指でなぞった。すると、その指の下から紡がれるように新たな文字列が現れる。
“何があったの?”
“あなたは誰?”
4-2 絶対に阻止しなければ
翌朝。小屋の2階のベッドで目が覚めた心羽は、さっきまで見ていた夢の内容を思い出していた。絶対に続きがあるはずなのに、ぶつ切りにされたような感覚。夜空に似たあの光景も、間違いなくどこかで見覚えがある。しかしどれだけ考えてもあの光景に心当たりはないし、夢の内容も意味不明で理解できない。
既に起きていたエイミーと挨拶を交わし、朝食をとる。エイミーは周囲に起きている人がいないことを確認すると、真剣そうな面持ちで心羽に話しかけてきた。
「あなたが探してるイジェンドって人についてなんだけど……昨日あなたが使ってたカルナ、あれもイジェンドの模倣ってこと?」
「そうだよ、あの時の私は能力も容姿もイジェンドに“変身”してた」
「髪型や身長、目の色は?」
「えーと、髪の色は赤で、毛先は肩くらいまである。身長が高くて、目の色は翠色だったかな。どうして?」
「正直に言うね。実は昨日まで、あなたを炎の魔女なんじゃないかと疑ってたの。でも昨夜、あなたはその力の正体を教えてくれた。“変身”の時の容姿もイジェンドを準拠とした姿になるのよね? だとしたら、イジェンドこそが10年前の炎の魔女なのかもしれない」
「イジェンドは、魔物を呼んで村を襲うような人じゃないよ」
「そうだけど、炎の魔女と特徴があまりにも一致しすぎてる。例え本人じゃないにしても絶対何らかの関係があるはず」
「うーん、たしかに…」
まてよ、特徴があまりにも似すぎてる…?
もし、誰かが炎の魔女と勘違いして、イジェンドを襲ったりしたら……それは絶対に阻止しなければ。
「……一刻も早くイジェンドと合流しないと!ごめんエイミー、またあとで!」
「ちょっと待って心羽ちゃん、私も行くよ!」
「えっ?」
「私もイジェンドと会ってみたい、炎の魔女に関する情報が得られるのなら…!」
「そっか…そうだよね、わかった!」
「すぐ支度するから!」
4-3 きっとあの人がやったんだ
キラちゃんにナビゲートを頼み、イジェンドの方角へ走る心羽とエイミー。
「こんな早朝から何事かしら?まったく鳥使いが荒いんだから」
「ごめんキラちゃん。イジェンドは今も無事なの?」
「今向かってる場所は30分前にイジェンドが確認されたところだわ。きっとまだ焦るほどの事態は起きていないわよ」
「30分前か、よかった…」
「私にはそのキラちゃんって子が喋ってるのは聞こえないんだけど」
「そうだった…キラちゃんによると、イジェンドは30分前には無事が確認されてるって!」
「実は昨日、影魔生産装置が誰かに壊されたって聞いた時、私は真っ先にイジェンドが浮かんだの。きっとあの人がやったんだって。でももしそうなら、イジェンドは猟団の活動範囲にまで入ってきてたってことでしょう? だから、皆が活動を始める前にイジェンドと合流しなくちゃ」